骨材試験の虚偽報告事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:33 UTC 版)
「浜岡原子力発電所」の記事における「骨材試験の虚偽報告事件」の解説
4号機の建設時に使用されたアルカリ骨材反応試験にて不正行為が行われていたことが、2004年7月27日、当事者が原子力安全・保安院に申告したことにより明らかとなった。内部告発を行った者は『安倍川開発』の社員であったが、生コンプラントに骨材を納入していた『小笠開発』(『太平洋セメント』の子会社)に出向し、製造管理部門に勤務しており、『小笠開発』社長との共謀であった。告発者は4号機の建設が完了した後に発生した阪神・淡路大震災を光景を見て「自分のやってきたことに心が苦しんでいた」「安全性が問われる原発でも不正が行われていることだけはどうしても多くの人に知らせなくてはならないと決断した」とJanJanでのインタビュー記事で答えている。 不正の内容は当初は試験成績書の改ざんであり、動機は中部電力が「良質な骨材」と広報していたため、納入業者として不良品が発生しても引っ込みがつかなくなったことである。提出書類のチェックが厳しくなった後は、試験サンプルのすり替えを行うようになったという。なお、この事件を取り上げた研究者は、一般的にコンクリートのアルカリ骨材反応は建設後15 - 20年経過してひび割れの形で顕在化する点も言及している。この問題により、保安院は8月3日、中部電力に事実関係を確認するよう指示し、調査結果は10月12日に提出された。2004年10月14日には、衆院議員吉井英勝が本会議で取り上げた。また、保安院が10月14・15日に実施した現地調査では1 - 5号機のコンクリート構造物全てで有害なひび割れは認められないとの評価が出された。 10月18日に開かれた原子力安全委員会でもこの件は取り上げられ、発電所の全ての原子炉について再調査した結果が報告された。それによれば、1 - 3号機の建設時はアルカリ骨材反応試験義務自体が存在しなかったこと、現状ひび割れが生じていなくても将来にわたりひび割れが生じない保証にはならないことなどが報告された。12月10日、保安院は中部電力の回答に対する審査結果を発表し、中部電力の再発防止策を妥当と評価、新たなコア抜き取りによる詳細試験の実施を指示した。 この事件の問題点として内部告発は自己犠牲を必要とし(今回のように事実であれば)歓迎すべきこととは言え、その実行時期が遅すぎたこと、中部電力が当初実施した事実確認では新たなコア抜きは無く、外観検査と施工関係書類上からのアルカリ量計算にとどまっており、初動が鈍かったことなどが技術者倫理の研究者から指摘されている。
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