類似品の登場と認証規格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/24 20:40 UTC 版)
HANSは登場当初は上記のような問題があったため、それぞれの競技内容に沿ったヘッド・アンド・ネック・サポートの類似品が登場した。はじめに世に現れたのはNASCARで2001年以降HANSと共に使用が認可されたハッチェンズ・デバイス(英語版)であった。2000年にセーフティ・ソリューションズ社が発表したハッチェンズ・デバイスは、脇下と腰の2箇所で締めたケブラー製ベルトからヘルメットに複数本のストラップを伸ばし、Dリングで連結するもので、HANSのような大きなサポーターを必要としないため体や首の動きを妨げにくい利点があったが、NASCARでは2005年以降はHANSの使用のみを認可し、ハッチェンズ・デバイスの使用は禁止となった。 元々は帆船レース用カッターボートの索具(英語版)の開発者であったアシュリー・ティリングにより、ヘッド・アンド・ネック・サポート向けのクイックリリース・シャックル(英語版)が開発され、車両乗降時のHANSの脱着が非常に楽になったことも、ドライバーたちがHANSを受け入れる契機となった。クイックリリース・シャックルは、NASCARドライバーのスコット・プルエット(英語版)が2000年のPPI・モータースポーツ(英語版)時代にハッチェンズ・デバイスと共に使用しはじめ、その後HANSでも導入された。これにより、2016年現在では米国のモータースポーツにおいてはモンスタートラックやモトクロスなどの競技でも、何らかの形状のヘッド・アンド・ネック・サポートは大概用いられるようになった。 2007年7月、米国の非営利団体「SFI Foundation」はHANSを始めとするヘッド・アンド・ネック・サポートの安全性の認証規格である「SFI スペック38.1」を発表した。スペック38.1は少なくとも70 Gの衝撃から装着者を防護できる性能要件が課されており、本家HANSの他、2003年にオフロードバイク競技向けとして登場したリアット-ブレイス(英語版)社のMoto-Rデバイス、2006年にLFTテクノロジーズ社が開発したR3デバイス(英語版)、セーフティ・ソリューションズを買収したシンプソン・パフォーマンス・プロダクツがハッチェンズ・デバイスの構造を発展させたハッチェンズ・ハイブリッド・デバイス、NecksGen社がパワーボート向けに開発したREVデバイス、レーシングカートやダートトラック向けヘルメットを開発していたZ Sports社が発表したZ-Techデバイスなどがスペック38.1の認証を取得した。 スペック38.1の普及は、それまで多くのモータースポーツで寡占的なシェアを誇っていたHANSの地位を一定以上低下させる効果をもたらした。2010年以降ハッチェンズ・ハイブリッドがFIAやNASCARで再度認証を得てレースシーンに復帰する切っ掛けともなり、オートバイやモーターボート競技向けのシンプルなスペック38.1準拠デバイスは、より安価な価格で効果的なヘッド・アンド・ネック・サポートが参戦資金が少ないプライベーターにも十分に普及するための原動力にもなった。そしてスペック38.1に2016年現在では適合しなくなった旧タイプのハッチェンズ・デバイスやその類似品は、スペック38.1準拠デバイスの使用を必ずしも義務化していない小規模なレースカテゴリーの参加者であっても、誰もが簡単に入手可能な価格で市場に提供されるようにもなった。
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