電気化学における電解質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 10:30 UTC 版)
電解液に二本の電極を入れて電圧をかけると、電解液は電気を通す。通常、裸の電子は電解質を通ることはできないが、代わりに、陰極では陰極から電子を受け取る反応すなわち還元反応が、また陽極では陽極に電子を奪われる化学反応すなわち酸化反応が起こる。この結果、陰極の回りに負の電荷の雲が発達し、陽極の回りには正の電荷が蓄積する。電解液の中のイオンはこれらの電荷を中和するように移動し、反応が継続し電気が流れ続けるのである。 例えば、食塩(塩化ナトリウム)の希薄水溶液においては、陰極の反応は次の通り。 2 H2O + 2 e− → 2 OH− + H2 こうして、水素ガスが泡になって発生する。一方陽極での反応は次の通り。 2 H2O → O2 + 4 H+ + 4 e− および 2 Cl− → Cl2 + 2 e− こうして、酸素および塩素が放出される。 正の電荷を持つナトリウムイオンNa+は陰極へ移動し、そこにあるOH−の負の電荷を中和する。そして負の電荷を持つ塩化物イオンCl−は陽極へ移動し、そこにあるH+の正の電荷を中和する。電解質から生み出されるこれらのイオンが無いと、電極の周りの電荷が電子の流れを妨げる。なぜなら、H+とOH−の水中の拡散は、はるかに数が多い塩のイオンの移動よりも少ないからである。 電解質の導体は、金属-電解質界面での化学反応が有益な効果を生むような電子機器に用いられる。 電池では、互いに異なる電気親和性を持つ2つの金属が電極として使われている。電池の中が電解質イオンによって閉回路になるとき、電子が一方の電極から他方の電極に流れる。こうして電極の化学反応が電解質に蓄えられた化学エネルギーを少しずつ消費していく。 一部の燃料電池では、水素と酸素を別々に保持している板の間を、固体の電解質(またはプロトン伝導体)が電気的に接続している。 電気めっき槽では、電解質がめっきされる材質の上に金属を付着させると同時に、回路の構造を電気的に接続している。 電力計においては、二つの薄い水銀の層が、電解質で充填された薄い隙間を挟んでいる。電荷がこの装置を通過するに連れて、一方では金属が溶け、もう一方に蓄積するので、目に見える隙間がだんだん動いていく。 電解質コンデンサでは、極めて薄い「誘電体」または「絶縁体」のコーティングを作るのに電解質の化学反応が使われる。電解質の層が一枚のコンデンサの壁としてはたらいているのだ。 一部の湿度計では、空気の湿度を計るのにほとんど乾燥した電解質の電導度を測定する。 高温で軟らかくなったガラスは電解質の導体となるため、一部のガラス工場では大量の電気を通すことでガラスを融けたままに保つ。 ナトリウム・硫黄電池ではβアルミナが電解質として使用される。 また電気化学および溶液化学の測定において、イオン強度を調整するために、過塩素酸ナトリウムなど配位力の弱い電解質が用いられる。
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