電気化学合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/15 08:34 UTC 版)
電気化学的重合では、電位はチオフェンと電解質を含む溶液に適用することにより、陽極上に伝導性ポリチオフェンフィルムを作る[要出典]。電気化学的重合はポリマーを分離・精製する必要が無いため便利であるが、架橋結合のような不規則構造が多かれ少なかれ作られる。 右の図は、モノマーの酸化によってラジカルカチオンが生成し、二番目のラジカルカチオンと繋がってジカチオン二量体を作るか、他のモノマーとラジカルカチオン二量体を作る様子を示したものである。in situビデオ顕微鏡法、サイクリックボルタンメトリー、光電流分光法、電気化学水晶振動子マイクロバランスを含むいくつかのテクニックが、陽極上へのポリマーの沈殿を導く核形成と成長機構の説明に使われた。長時間の沈殿では、電極表面への秩序だったポリマー鎖が、長い/短いフレキシブル鎖になるか、より交差結合された鎖に成長するかは、その重合条件に左右される。 電気化学的に合成されたポリチオフェンフィルムの品質は、いくつかの要因に影響を受ける。その要因には電極の材料、電流密度、温度、溶媒、電解質、水の存在、そしてモノマー濃度が含まれる。この他、モノマーの構造と加電圧も重要であるが、この2つは相互に関係する。モノマーを酸化するための必要な電位は、チオフェン環のπ電子系中の電子密度に依存する。電子供与性基は低酸化電位であり、電子求引性基は高酸化電位である。したがって、アセトニトリルとテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム中で、3-メチルチオフェンと非置換チオフェンをそれぞれ重合させると、前者はSCE(飽和カロメル電極)に対して約1.5 V、非置換チオフェンはSCEに対し約1.7 Vで重合する。しかし、3-置換チオフェンのα炭素に分枝があるとその立体障害により重合が阻害される。したがって、多くのチオフェンモノマーの酸化電位は計算上の酸化電位より大きくなる。これが“ポリチオフェンパラドクス”と呼ばれる所以である。これは、電気化学重合の大きな不利の一つで、複合側基を持つ多くのチオフェンモノマーが制限を受ける。
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