雨量計の歴史
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雨量計を記述した世界最古の書は、紀元前4世紀頃に古代インドのマウリヤ朝初代チャンドラグプタ王の宰相であり軍師だったカウティリア(KautilyaまたはChanakya, 紀元前350年-紀元前283年)の書いた「実利論(Arthastra)」である。当時穀物の種まきの時期を決めるために、直径約45 cmの鉢で定期的に雨量が観測された。 洪水に悩まされていた中国では、数学者である秦九韶(1202-1261)が1247年「数書九章」の中で、各地点に置かれた雨量計の値を使ってどうやって面平均値を出すかを議論した。李氏朝鮮では、1442年に第4代国王である世宗が直径14 cm、深さ30 cmの青銅製の雨量計を製作し、これが現存する最古の雨量計とされている。この雨量計を用いた観測は朝鮮で独立に発達したもので、李氏朝鮮はこれを各地方に配置することによって、世界初の組織的観測網を構築した 。この観測は1907年まで宮廷に報告されたとの記録がある。 ヨーロッパで記録が残っている最古の雨量計の記述は、イタリアの水理学者ベネデット・カステッリによるもので、雨量計の水位を測定するためのものだった。イギリスでは、1662年に建築家で有名なクリストファー・レンがウェザークロック(自動気象観測装置)の一部として雨量計を設計した。これは転倒マス型で、溜まった雨が一定量になると容器が傾いて中を空にする仕組みになっていた 。1677年頃にはイギリスの数学者で天文学者のリチャード・タウンリーが蒸発による誤差を減らすため漏斗型の雨量計を開発した。1695年にはロバート・フックも同様の雨量計を製作し、これはグレシャム・カレッジで数年間使われた 。 イギリスの医師ウィリアム・ヘベルデンは、同じタイプの雨量計を庭と煙突の上とウェストミンスター寺院の塔の上の3か所に設置して調べたところ、庭の雨量に対して煙突の上は80%、塔の上は50%の雨量しかないことを発見した。彼は雨粒が地面に到達する数百m前から成長するため、高度が低いほど雨量が増えるのではないかと推測した。 これに対して、経済の限界効用理論を提唱したことで有名なイギリスの経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズは、側面がガラス製の風洞を作り、その中に雨量計を置いて煙を流して観察し、雨量計に対する風の影響の実験を行った。その結果から、1861年に高所のように風が強い場所だと雨量計自身が風を強めて雨滴が雨量計を飛び越えるため、雨量計による雨滴の補足率が下がることを発見した。これによって、雨量を測定する際に風の影響を考慮しなければならないことがはっきりした。 気象庁では、雨量観測の際には建物の屋上などを避けて風の影響がない場所を適切としており、雨量計設置場所の近くに建物がある場合にはその風の影響を避けるために少なくとも建物の高さの2倍以上、できれば4倍以上離れた場所を推奨している 。
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