集団安全保障と集団防衛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 01:23 UTC 版)
集団防衛の具体的な例としては、大きくわけて日米同盟などの二国間の軍事同盟を締結する場合、北大西洋条約機構 (NATO) のような複数の国家で集団防衛機構を構成する場合とがある。これら集団防衛の同盟や機構は、時として国際連合に代表される集団安全保障のシステムと混同して理解されることもあるが、確かに、集団防衛も集団安全保障も、諸国の協力により侵略を抑止し、抑止に失敗すれば武力行使をするという点においては共通しているものの、いくつかの点で制度的な相違を有している。 第一に集団防衛が敵対国とほぼ同等の防衛力で勢力均衡を維持し、相互に武力攻撃できない状態を作ることで安全保障を確保するのに対して集団安全保障は圧倒的優位により、平和破壊活動を抑止・制裁するという点が挙げられる。第二には、集団防衛が同盟の体制外への脅威に対抗するのに対して、集団安全保障はほぼ体制の内部の脅威に対処する枠組みであることである。 集団安全保障を重視する側からは、集団安全保障の方が集団防衛よりも破壊行為を効果的に抑止し、コストも低いと評価する一方、否定的な側からは、集団安全保障の枠組に自国の防衛を委ねることになれば、集団安全保障システムの構成国は防衛コストを最小化していく政策をとるようになり、集団安全保障システムの安定の根底にある「圧倒的な優位」が崩れていくという見方がなされている。または集団安全保障を肯定する側からは、集団防衛が対立と緊張を助長する要因を孕んでいると指摘するのに対し、否定論者からは集団安全保障システムは構成国への拘束が強く、体制内に共の脅威がなくなった場合の体制維持が困難であり、また、システムに非協力的な国が登場したり、システムに反発する国が暴走するフリーライダーと化した場合、システムが機能する可能性が著しく低下するという指摘がされている。 具体的には国際社会で武力紛争が発生した場合、国連の安全保障理事会の常任理事国のうちのひとつが拒否権を発動した場合、抑止と制裁が機能しなくなるという危惧はその代表的な例であり、故に国連においても、国際連合憲章第51条にて「個別的または集団的自衛の権利」を定め、加盟国が軍事同盟を締結し、集団防衛を図ることを容認している。結果として日米同盟をはじめ様々な集団防衛が国連の集団安全保障システムと並立・並存している状況にある。 集団安全保障と集団防衛の相違集団安全保障集団防衛抑止と制裁の力学 力の優位 力の均衡 脅威の所在 体制内 体制外 脅威の性質 不特定 特定 脅威の内容 侵略的意図 増強する能力 評価(長所) 安全保障のジレンマを緩和 高い実効性 評価(短所) 低い実効性 安全保障ジレンマを助長 制度的枠組 国際連合 / 国際連盟米州機構 / アフリカ連合 北大西洋条約機構日米同盟 / 米韓同盟
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