鍼灸師マッサージ師差別国家賠償等請求事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 18:25 UTC 版)
「鍼灸」の記事における「鍼灸師マッサージ師差別国家賠償等請求事件」の解説
2000年、全国保険鍼灸師マッサージ師連合会は健康保険の療養費について、柔道整復師に認められている受領委任払いが、鍼灸マッサージに認められていないのは差別であるとして国家賠償請求を起こした。千葉地裁は棄却判決を出し、原告は控訴。東京高裁は棄却判決を出した。 判決では「療養費支給は制度自体が例外的なものであり積極的に容認されるものではない」「柔道整復師に認められているという点だけでは要件たり得ない」「現在も柔道整復師に認める点は疑問がないわけではないが、歴史的事情もあり合理性がないとは言い切れない」と判断された。 第2 事案の概要ア 原告らの主張厚生労働省は,柔道整復師については受領委任払いを認めながら,あん摩マッサージ指圧師等についてはこれを認めないという差別的な取扱いをし,これにより,あん摩マッサージ指圧師等を利用した患者は,一旦全額を支払い,その後自ら療養費を請求するという煩瑣かつ負担のある手続が強要されているが,このような取扱いには何ら合理的な根拠がない。(中略) 第3 当裁判所の判断健康保険制度は、療養に関する費用を後払いとした場合には被保険者が一時医師に支払う費用を立て替える必要が生じるため迅速な医療を受けることができない可能性があることなどから,現物給付を原則としているものと解される。(中略) 健康保険法87条に基づく療養費の支給については,保険者は,療養の給付を行うことが困難であると認めるとき,又は保険医療機関以外の者から診察,手当等を受けたことがやむを得ないと認めるときは,現にその費用を事後的に療養費として支給できることとされており,療養費の支給自体が療養の給付の補完的な役割を果たすものと一角解される。そして,療養費については,健康保険法86条3項に規定される特定療養費,85条5項に規定される入院時食事療養費等とは異なり,現物給付化(保険者が被保険者に代わり医療機関等に支払うこと)を可能とする規定が設けられていない。また,療養の給付を担う保険医療機関等については,その指導監督を含む上記の厳格な指導監督を実施しているのに対し,保険医療機関等以外の者については,そのような指導監督等の手段が用意されておらず,保険医療機関等以外の者が行う療養の給付については,その適正な給付を担保する手段も用意されていない。すなわち,健康保険法上,療養費の支給自体が例外として設けられているとともに,療養費の支給を療養の給付のように現物給付化することは,健康保険法の予定していないものと解される。(中略)また,受領委任払いは,保険者において施術の内容や額等につき被保険者から確認することができないまま施術者より請求がなされることから,不正請求や業務範囲を逸脱した施術を見逃す危険性が大きいといわざるを得ない。そうすると,受領委任払いは,健康保険法上,積極的に容認されているとはいえず,受領委任払いの取扱いが認められるのはあくまでも特例的な措置といわなければならない。(中略)したがって,本件取扱いが合理性を有するか否かの判断は,上記前提の下にされるべきであって,単に,柔道整復師に認められているものが,現在あん摩マッサージ指圧師等に認められないことに合理性があるかというだけでは足りないというべきである。そこで、このような観点から検討する。上記イ(イ)の事実関係の下において,本件取扱いは,かつては合理性を有していたとしても,その後,整形外科医が増加していることなどがうかがわれる(甲A13)現在,果たしてその合理性があるかについては疑義がないではない。しかしながら,上記のとおり受領委任払いは特例的措置であるから拡大しない方向で実施ないし運用するのが相当である上,柔道整復師については,正当な理由があって受領委任払いが認められ,それが長年にわたって継続されてきたという事実があり,限定的とはいえ医師の代替的な機能を果たしていること等を考慮すると,合理性がないとまではいえない。(中略)また,健康保険制度は,被保険者及びその被扶養者の生活の安定を図るための制度であって,施術者の利益を保護するためのものではない — 平成12年(ワ)第112号 損害賠償等請求事件 (千葉地方裁判所 民事第三部 2004-01-16). Text
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