銀幕のスターへ
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「ローレン・バコール」の記事における「銀幕のスターへ」の解説
『脱出』(1944年)のスクリーンテスト期間中にバコールは自身の身震いをひどく気にするようになり、震えを抑えるために顎を胸に押し付けた姿勢でいたために、上目づかいでカメラに向かうようになった。期せずしてこの目線が「The look(ザ・ルック)」と呼ばれるようになり、その低い声と共にバコールのトレードマークとなっていった。『脱出』でバコールが演じたのは、ハワード・ホークスの妻ナンシーと同じく「スリム」というあだ名で呼ばれるマリー・ブロウニング役で、ハンフリーボガートはハワード・ホークスと同じく「スティーヴ」というあだ名で呼ばれるハリー・モーガン役だった。バコールの自叙伝では、撮影現場での二人はすぐに仲良くなったとされている。バコールと当時メイヨー・メソット (en:Mayo Methot) と結婚していたボガートは、数週間の撮影期間で親密になり、互いに意識するようになっていった。 当初の脚本では『脱出』でバコールが演じたマリー・ブロウニングはもっと小さな役どころだったが、撮影が進むにつれてどんどん重要な役どころとなり、最終的にはヒロイン格となっていった。『脱出』の公開後、バコールは一躍スターダムに登りつめ、『脱出』での演技がその後のバコールのイメージに重要な役割を果たすこととなった。バコールは大衆文化だけでなく、他の有名な映画スターたちと同様にファッションにも大きな影響を与える存在となっていったのである。バコールが演じたスリム役は、ホークス的女性像の典型例と言われている。 『脱出』の配給元だったワーナー・ブラザースは、映画の宣伝とバコールの映画スターとしての地位を確かなものとするために、大々的な一連のキャンペーンを展開した。バコールが、アメリカ合衆国副大統領ハリー・S・トルーマンが弾くピアノに寝そべっている有名な写真が存在する。これもワーナー・ブラザースによるキャンペーンの一環で、バコールの大衆へのアピールを狙ったものである。1945年2月10日に、ワシントンD.C.のナショナル・プレス・クラブ (en:National Press Club (USA)) をバコールが訪れた。このときはバコールの広報担当だったワーナー・ブラザースの宣伝主任も同席している。チャーリー・エンフィールドという記者が、当時20歳だったバコールに、ハリー・S・トルーマンが弾くピアノに座ってくれるよう依頼して撮影されたのがこの写真である。 『脱出』のあとに、バコールは『密使』(1945年)でシャルル・ボワイエの相手役を演じたが、この作品は批評家たちから酷評される結果となった。バコールにとっても『密使』の失敗が自身のキャリアに大きな傷を残す可能性があり、翌年に再びボガートと共演したフィルム・ノワール作品『三つ数えろ』(1946年)でのミステリアスで辛辣なヴィヴィアン・スターンウッド役も、バコールの人気をすぐさま取り戻す特効薬にはなり得なかった。 『三つ数えろ』はフィルム・ノワール作品における象徴としてのバコールの地位を決定づけた作品である。その後の女優としてのキャリアを通じて、バコールはこのジャンルの作品と強い関係性を保ち続け、『三つ数えろ』のヴィヴィアンのような、独立心が強く官能的な運命の女の役を演じることも多かった。映画評論家ジョー・マクエルヘイニーは「(『三つ数えろ』の)ヴィヴィアンにはほとんど完璧な身のこなしと立ち居振る舞いが表現されている。彼女にとってぶざまに這いつくばることは決してありえない」としている。 『脱出』と『三つ数えろ』以外に、バコールとボガートは2本の映画作品で共演している。そのうちの1本であるフィルム・ノワール作品『潜行者』(1947年)では、バコールは謎めいたサンフランシスコの芸術家を演じている。ニューヨーク・タイムズのボズレー・クラウザーはこの作品での演技を「バコールは、鋭い目つきで自分が欲するものを十分に理解している女性を、重圧感たっぷりに演じて見せた」と評している。バコールとボガートが共演した最後の映画作品が、1948年に公開された『キー・ラーゴ』である。この作品はジョン・ヒューストン監督のメロドラマ・サスペンスで、エドワード・G・ロビンソンもギャング役で出演している。映画評論家ジェシカ・キアンは「バコールはぎりぎりの二面性を持ち、独立心に富んだ役を演じて見せた。今までの作品よりもさらに興味深い役柄だったと言える」としている。
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