遺伝学および発生学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 07:50 UTC 版)
男女・雌雄の区別つまり性別について、各種神話の中にも男性神・女性神が登場するように古代から人類は意識をしていた。アリストテレスは著書『動物発生論』において、ヒトの性別について「女は男の対極にある」と述べている。彼は『動物発生論』の中で胎児の性別がどのように決まるかについて考察を行い、「受精時点では性別は決定しておらず、胚発生の過程で性別が決定する」と結論した。これと異なりアナクサゴラスのように「胎児の性別は、父親がもたらした種によって受精のときに決定する」と考える者もあった。 性決定機構についての科学的知見が得られたのは、1890年のドイツの生物学者ヘルマン・ヘンキングによるX染色体の発見が最初とされる。20世紀初頭にクレランス・マックラングは、X染色体が性決定と関連があるとして、「X染色体は男性決定染色体である」と主張した。この考えは間違っていたが、染色体と性決定機構を結びつける最初のものであった。1905年にネッティー・マリア・スティーヴンスがコメノゴミムシダマシ(Tenebrio)の幼虫においてY染色体を発見し、X染色体と共に性決定に関与することを見出した。 植物の性染色体は1917年に苔植物の一種Spaerocarposで最初に報告された。種子植物の性染色体は1923年に、木原と小野がスイバにおいて、Santosがカナダモ、Blackburnがヒロハノマンテマ、Wingeがホップ・セキショウモ・ヒロハノマンテマなどにおいて、それぞれ独立に発見した。 哺乳類においては、未分化の生殖腺が精巣あるいは卵巣に分化することが知られていた。形成された精巣が胚の雄性化において重要な役割を持つことを証明したのはアルフレート・ヨーストであった。彼は1940年代に、ウサギの雄の胎児から精巣を取り除くと、雌の形態を持つように性分化することを示した。このことによって、哺乳類の性決定・性分化についての「染色体がどのように作用して性別を決めるか(性決定)」「決定された性別がどのようにして表現されるようになるか(性分化)」という基本的疑問点のうち、後者に対する一つの結論が出された。 性決定についてDNAレベルでの研究が発表され始めたのは1980-1990年代からである。ショウジョウバエのSxlに関する研究(1988年)・哺乳類のSRYの同定(1990年)を端緒に、2000年代にかけて多種多様な生物の性決定について研究が行われている。しかしながら、生物種によってそれぞれ性決定機構が異なっているために、研究途上である生物種は数多い。
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