遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/07 14:08 UTC 版)
「高分子医薬品」の記事における「遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態」の解説
主に天然型と遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態の差異について述べる。高分子医薬品の多くは糖蛋白質であり、遺伝子組み換えで大腸菌につくらせたリコンビナント型(r)蛋白質は天然型(n)蛋白質と異なり糖鎖が欠けている。これまでの研究から、糖鎖の有無が高分子医薬品の体内動態に大きな影響をおよぼす事例が数多く報告されており、その性質を利用することで意図的に糖鎖を改変した高分子医薬品の創製も進んでいる。古くは例えばモデル化合物として血清アルブミンを異なる糖鎖修飾すると肝臓への取り込みに著しい差が生じることが知られている。これは糖鎖認識に基づく受容体介在性エンドサイトーシス機構の関与が考えられる。事実、IL-2を静脈注射後の体内動態では、r型の消失がn型よりも著しく速い。IFNβについては筋注ではr型はn型よりも著しく速く血中から消失するが、静注時においては両者間に大きな差はみられず、糖鎖の有無により、筋注局所もしくは筋肉から血液への移行過程の動態に差が生じるものと考えられている。 ゴーシェ病は遺伝的にグルコセレブロシダーゼという酵素の機能が欠損して言う難病である。糖脂質をセラミドに分解できないため、糖脂質が細網内皮系の細胞に蓄積することで全身性の症状を引き起こす。この治療法の1つとして酵素補充療法が知られている。酵素補充療法では外来的に酵素を投与することでクッパー細胞やマクロファージにグルコセレブロシダーゼを供給する方法が考えられたが、酵素自身を単独で投与しても効果があまり認められなかった。その原因としては外来的に投与した酵素がクッパー細胞やマクロファージに到達しないことがあげられた。そこでグルコセレブロシダーゼに付加する糖鎖の末端をマンノースにすることで肝臓のクッパー細胞に高発現するマンノース受容体に認識させ、効率よく酵素を到達させることに成功した。糖鎖修飾型グルコセレブロシダーゼはイミグルセラーゼ(商品名セレザイム)として上市されている。 またエリスロポエチン(EPO)の半減期を延長するために糖鎖を増加したダルベポエチンα(商品名ネスプ)が開発されている。エリスロポエチンは3つのN-結合糖鎖と1つのO-結合糖鎖をもち、糖鎖の末端に存在するシアル酸の数を減少させると、in vitroの活性は増加するが、逆にin vitroの活性は減少することが知られていた。ダルベポエチンαはEPOの5箇所のアミノ酸残基を改変し、新たに2箇所N-結合糖鎖を付加させることにより、受容体へのEPO結合親和性は減少し、血中半減期がEPOの約3倍に延長した結果、in vivo活性が増加した。それゆえ、従来の週3回投与から週1回投与が可能となった。
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遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態
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「薬物動態学」の記事における「遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態」の解説
主に天然型と遺伝子組換え(リコンビナント)型の高分子医薬品の体内動態の差異について述べる。高分子医薬品の多くは糖蛋白質であり、遺伝子組み換えで大腸菌につくらせたリコンビナント型(r)蛋白質は天然型(n)蛋白質と異なり糖鎖が欠けている。これまでの研究から、糖鎖の有無が高分子医薬品の体内動態に大きな影響をおよぼす事例が数多く報告されており、その性質を利用することで意図的に糖鎖を改変した高分子医薬品の創製も進んでいる。古くは例えばモデル化合物として血清アルブミンを異なる糖鎖修飾すると肝臓への取り込みに著しい差が生じることが知られている。これは糖鎖認識に基づく受容体介在性エンドサイトーシス機構の関与が考えられる。事実、IL-2を静脈注射後の体内動態では、r型の消失がn型よりも著しく速い。IFNβについては筋注ではr型はn型よりも著しく速く血中から消失するが、静注時においては両者間に大きな差はみられず、糖鎖の有無により、筋注局所もしくは筋肉から血液への移行過程の動態に差が生じるものと考えられている。 ゴーシェ病は遺伝的にグルコセレブロシダーゼという酵素の機能が欠損して言う難病である。糖脂質をセラミドに分解できないため、糖脂質が細網内皮系の細胞に蓄積することで全身性の症状を引き起こす。この治療法の1つとして酵素補充療法が知られている。酵素補充療法では外来的に酵素を投与することでクッパー細胞やマクロファージにグルコセレブロシダーゼを供給する方法が考えられたが、酵素自身を単独で投与しても効果があまり認められなかった。その原因としては外来的に投与した酵素がクッパー細胞やマクロファージに到達しないことがあげられた。そこでグルコセレブロシダーゼに付加する糖鎖の末端をマンノースにすることで肝臓のクッパー細胞に高発現するマンノース受容体に認識させ、効率よく酵素を到達させることに成功した。糖鎖修飾型グルコセレブロシダーゼはイミグルセラーゼ(商品名セレザイム)として上市されている。 またエリスロポエチン(EPO)の半減期を延長するために糖鎖を増加したダルベポエチンα(商品名ネスプ)が開発されている。エリスロポエチンは3つのN-結合糖鎖と1つのO-結合糖鎖をもち、糖鎖の末端に存在するシアル酸の数を減少させると、in vitroの活性は増加するが、逆にin vitroの活性は減少することが知られていた。ダルベポエチンαはEPOの5箇所のアミノ酸残基を改変し、新たに2箇所N-結合糖鎖を付加させることにより、受容体へのEPO結合親和性は減少し、血中半減期がEPOの約3倍に延長した結果、in vivo活性が増加した。それゆえ、従来の週3回投与から週1回投与が可能となった。
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