遺伝子組換え作物とモンサント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 19:59 UTC 版)
「モンサント (企業)」の記事における「遺伝子組換え作物とモンサント」の解説
上述のように遺伝子組換え作物に力を入れている企業である。多くの種苗会社の他、新たな遺伝子組換え品種や技術を開発した企業を吸収したり、それらの企業に資本参加している。 自社の開発した遺伝子組換え作物の種子を販売するに当たり、次回作には自家採種したものを利用しないとの契約を栽培農家との間で結んでいることが多い。そのため、その契約に違反して遺伝子組換え作物の種子を自家採種し以後の作付けに利用した農家に対して、知的財産権侵害として多くの訴訟を起こしたことから注目を集め、一定の批判を受ける事態が生じた。 また、いわゆる「ターミネーター遺伝子」を組み込んだ組換え品種を開発した企業を買収した。「ターミネーター遺伝子」及び「ターミネーター技術」とは、遺伝子組換え作物に結実した種子を発芽できなくするものであり、農家による遺伝子組換え作物の自家採種を無効にしたり、遺伝子組換え作物による遺伝子の拡散や遺伝子汚染を防ぐために開発されたものである。しかし、この技術の倫理性に疑問が投げかけられたために、これを用いた種子の流通はまだ行われていない。 発展途上国の農民が同社の遺伝子組換え作物の種子に頼りきりになった場合、品種特性の多様性の低さによる病虫害や品種と栽培地帯とのミスマッチ、種子の値段の高さからかえって農民が困窮する場合がありうる。 1999年に世界第3位の綿花生産国インドに進出したモンサントは、害虫に強く、収穫量と利益を増やすという宣伝文句で、GMOの種子を販売し、2002年よりインドで遺伝子組換えワタ(殺虫タンパク質生成遺伝子の名から「Btワタ」と称せられる)が一般圃場で栽培されるようになった。ところがこの種子に組み込まれていた害虫駆除の遺伝子は、インドにいる害虫にはほとんど効果がなく、加えて2006年は干ばつの影響もあって綿花栽培農家は打撃を受けた。インドに限らず干ばつや環境変化により世界中で被害が出ているという非難もある。しかし、一方では実際には害虫抵抗性ワタ(Btワタ)の方が経済的な利益が多いという報告もある。さらに国際アグリバイオ事業団 (The International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications ; ISAAA) の調査によると、現在ではインドの各地方に適した様々な遺伝子組換え品種が開発されており、インドにおいて2008年には綿花栽培面積の80%が、2009年には87%(約840万ha)がBtワタになっている。2009年には560万人の小農がBtワタをインドで栽培している。遺伝子組換えワタを導入する以前と比較すると綿花栽培に使用される農薬使用量の大幅な減少と単位面積当たりの収量の大幅な増加(2001-2002年では308 kg/ha、2009-2010年では568 kg/ha)が報告されている。
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