通貨払いの原則(つうかばらいのげんそく)
通貨払いの原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 09:17 UTC 版)
使用者は労働者に対して原則として通貨で賃金を支払わなければならない。これは現物給与の禁止が本旨である(昭和22年12月9日基発452号)。労使協定で定めたとしても、賃金を通貨以外のもので支払うことはできない。 使用者は、賃金の支払について次の方法によることができ、通貨払いの原則については例外がある。 法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合(第24条1項但書)現在法令による定めはないので、現物給与を支払うには労働協約に定めることが必要になる。それが許されるのは、協約の適用を受ける労働者に限られる。 労働者の同意を得た場合において、賃金について確実な支払の方法による場合(施行規則第7条の2各項)労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する労働者の預貯金への振込みによる方法(第1項第1号) 労働者が指定する金融商品取引業者に対する労働者の預り金への払込みによる方法(第1項第2号) 銀行その他の金融機関によって振り出された当該銀行その他の金融機関を支払人とする小切手の交付による方法(第2項第1号)※退職手当に限る 銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手の交付による方法(第2項第2号)※退職手当に限る 郵政民営化法に規定するゆうちょ銀行がその行う為替取引に関し負担する債務に係る権利を表章する証書を交付する方法(第2項第3号)※退職手当に限る 「労働者の同意」については、労働者の意思に基づくものである限りその形式は問わないが(通達上は書面による同意までは求めておらず、口頭でもよい。昭和63年1月1日基発1号)、労使協定の定めにより包括的に行うことはできない。 「労働者が指定する」とは賃金の振込先について銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であり、この指定が行われれば「労働者の同意」が特段の事情がない限り得られているものとする(昭和63年1月1日基発1号)。さらに使用者として実際に賃金の振込みをするにあたっては、以下の要件を満たすことが必要となる(平成10年9月10日基発530号、平成13年2月2日基発54号)。 口座振込等は、書面による個々の労働者の申出又は同意により開始し、その書面には以下の事項を記載すること。口座振込等を希望する賃金の範囲及びその金額 労働者の指定する金融機関等の店舗名ならびに預貯金等の種類及び口座番号 口座振込等の開始希望時期 口座振込等を行う事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と、以下の事項を記載した書面による協定を締結すること。口座振込等の対象となる労働者の範囲 口座振込等の対象となる賃金の範囲及びその金額 取り扱い金融機関及び取扱い証券会社の範囲 口座振込等の実施開始時期 使用者は、口座振込等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払いに関する計算書(給与明細書)を交付すること。基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額 源泉徴収税、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、その事項ごとにその金額 口座振込み等を行った金額 口座振込等がなされた賃金は、所定の賃金支払日の午前10時ごろまでに払い出し又は払い戻しが可能となっていること。 取扱金融機関及び取扱証券会社は、金融機関又は証券会社の所在状況等からして一行、一社に限定せず複数とする等労働者の便宜に十分配慮して定めること。 使用者は、証券総合口座への賃金払込を行おうとする場合には、当該証券総合口座への賃金払込を求める労働者又は証券総合口座を取扱う証券会社から投資信託約款及び投資約款の写しを得て、当該証券会社の口座がMRFにより運用される証券総合口座であることを確認のうえ払込み等を行うものであること。また、使用者が労働者等から得た当該投資信託約款及び投資約款の写しについては、当該払込みを継続する期間中保管すること。
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