近年の海賊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/16 03:57 UTC 版)
マラッカ海峡を通過する船は、年間9万隻にも上っている。特に、中東から東アジアへの石油輸送ルートとして重要である。 国際海事局(IMB)によると、この地方の海賊の主な拠点はインドネシアである。海賊は、主に3タイプに分けられる。独立した海賊専門グループ、犯罪組織の下部組織としての海賊、テロリストの一味としての海賊である。海賊専門グループは、攻撃しやすい船を選んで襲う傾向にある。犯罪組織の下部組織の海賊は、計画性と技術に長けており、大型荷物や乗客員の誘拐などを目的とすることが多い。テロ関連グループは、テロ活動の資金集めだったり、海賊行為そのものが狙いだったりと目的はさまざまである。また、インドネシアの自由アチェ運動のような反政府組織が関与しているとする説もある。 この地域で特に海賊が増えたのは、1997年のアジア通貨危機以降である。発生件数は発表元によっても異なるが、例えば日本の海上保安庁による2006年(平成18年)の報告書によると、2000年(平成12年)が突出して多く80件であり、2002年(平成14年)にかけては一時的に減少に転じるものの、再び増加傾向となり2004年(平成16年)には45件に達している。2004年には世界の海賊行為の4割がマラッカ海峡で発生しており、2005年3月には日本船籍の「韋駄天」の乗員が海賊に誘拐される事件も発生している。 2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件(911)以降、海賊とテロリズムとの関連を疑う人もいる。ただしアメリカ連邦海事局(MARAD)の専門家は、テロリズムと海賊行為とは区別しなければならないとし、また、港の停泊船を襲うギャングと海賊も区別する必要があるとしている。また、海賊行為は単なる海上の暴力行為ではなく、複数の問題が絡んだ複雑な案件であり、その対策もさまざまであると主張する専門家もいる。 IMBの報告によると、マラッカ海峡の海賊行為は2004年から減少に転じている。2005年には79件だったものが2006年には50件となっている。一方、2005年からはソマリア沖の海賊が急増、マラッカ海峡の海賊発生件数は2007年には2位に後退した。ただしIMBは2007年10月、インドネシアは依然世界で最も海賊行為が盛んな地域の一つであり、2007年1月からの発生件数はすでに37件であると報告している。ロンドンの保険組合ロイズも2006年、マラッカ海峡が保険対象としては戦争地域に準ずる危険度であると宣言している。ロイズのこの宣言が出たのは、シンガポールとインドネシアが海と空のパトロール強化を始めた後のことであった。 海賊行為の被害としては、直接奪われた品に注意が行きやすい。奪われることが多いのは、船内売店のもの、エンジン部品、現金、乗員の持ち物などである。しかし、実際の被害はそれに留まらず、海賊対策や保険にかかる費用も増加する。
※この「近年の海賊」の解説は、「マラッカ海峡の海賊」の解説の一部です。
「近年の海賊」を含む「マラッカ海峡の海賊」の記事については、「マラッカ海峡の海賊」の概要を参照ください。
- 近年の海賊のページへのリンク