輦台とは? わかりやすく解説

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れん‐だい【×輦台/×蓮台】

読み方:れんだい

江戸時代川を渡る客を乗せた台。ふつう、板に2本の担い棒をつけたもので、4人でかついだまた、大名貴人駕籠(かご)のまま乗せるものは大高といい、2、30人かついだ


輿

(輦台 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/31 10:25 UTC 版)

葵祭における斎王代の輿

輿(こし)とは、人を乗せて人力で運ぶ乗り物の1つ。

各地域の輿

日本

日本では天皇貴族大名など身分の高い人物が使用する儀式・儀礼の場での乗り物であった[1]

婚礼の際の妻の実家から夫の家へ輿に乗せて運ぶ風習から、結婚を女性の側から見て「輿入れ」または「入輿」(じゅよ)、身分の高い男性や金持ちの男性との結婚を玉の輿ともいう。祭礼の際に祭神の乗り物として担ぎ、神幸を行う人は「神輿」という。

葬儀の際にを乗せて担ぐための葬具も輿という[2]

形態

駕籠と違い「轅(ながえ)」と称する2本の棒の上に人が乗る台を載せた乗り物。轅を肩に担ぐか、手を下げた腰の位置で持ち、大勢の人間により運ばれる。輿を担ぐ者は力者(りきしゃ)、輿丁(よちょう)、輿舁(こしかき)と呼ばれる。輿には輦輿(れんよ)と手輿(たごし)(腰輿〈ようよ〉ともいう)の2つに分けられる。

輦輿は宝形造の屋根を上に載せたもので、轅を肩で担いで運ぶ。屋根の頭頂部に鳳凰を載せたものは鳳輦(ほうれん)と呼ばれ、天皇しか乗ることが許されなかった。これは後の神輿(みこし)の原型となった。これに対して屋根に葱花を載せた葱華輦(そうかれん)と呼ばれるものがあり、これは天皇が私的外出や神社への行幸の際に用いたほか、皇太子や后妃が用いる場合もあった。

手輿は、輦輿が肩で轅を担ぐのに対して、腰の高さで轅を手に下げて持ち、運んだものである。もとは天皇が内裏の中での移動や、火事などの緊急の移動の際に用いた略式の乗り物であったが、のちに上皇や僧侶、公卿なども牛車に代わって外出に用いるようになった。ただし、それらは鳳輦や天皇所用の手輿とは屋形(屋根を含めた乗用者を囲う部分)の構造や様式を変えて作られている。

一般所用の手輿の代表的なものに、屋形の四方にをかけた四方輿(しほうごし)、屋形を牛車に似せた網代輿(あじろごし)、総板製の屋形による板輿(いたごし)、屋形を筵張りにした張輿(はりごし)、屋形を漆塗りにした塗輿(ぬりごし)、また屋形がなく、人が座る台の左右と背後に手摺のみ設けた塵取輿(ちりとりごし)などが存在した。山道などの通行を容易にするため、屋形部分を取り外し床のみで担ぐことがあったが、これを坂輿(さかごし)と称した。

歴史

九曜紋入りの蒔絵の駕籠も見事なこしらえである

輿が初めて文献に現れるのは『日本書紀』で初めて見えるのは神武天皇31年の「皇輿」という記述だが当時輿が利用されていたかは疑わしいと考えられている[3]。次に垂仁天皇15年に竹野媛が輿から落ちてしまい亡くなったとあり、この頃には高貴な人の乗用具として使用されていたとみられている[3]。『日本書紀』では天武天皇元年に妃(のちの持統天皇)が輿に乗った記録などがある[3]

平安時代には天皇用として奈良時代から用いられていた鳳輦だけでなく葱華輦も使い分けられた[4]。新たな輿の形態である腰輿が出現したのも平安時代とされている[4]

鎌倉時代には『吾妻鏡』などに鎌倉将軍家の人々が輿を利用したと記されている[5]室町時代には将軍鎌倉公方管領家などごく限られた上級武家のみが使用できる牛車に次ぐ特別の乗り物とされた[6]

江戸時代は「駕籠の時代」といわれ主要な乗用具は駕籠であった[7]。輿の使用が許可されたのは御三家御三卿、7つの松平家加賀前田家など22家の合計35家のみ[8]。家格によっては親藩の大名でも輿の使用は認められなかった[8]

葬儀では棺を輿で担ぎ自宅から墓地まで葬列が続く「野辺送り」が行われていたが、大正時代には都市部で路面電車が普及したことで葬列が線路を塞ぐという問題が起きたことや葬儀場の郊外移転により、霊柩車に取って代わられるようになった[2]

中国

の時代には主に馬車や牛車が利用され、からの時代まで続いた[9]。輿はの時代から一部で使用され、の時代には高貴な女性の乗り物として兜輿(とうよう)が用いられた[9]後唐では宰相の参内に肩輿が用いられるなど、輿は男女両性に使用されるようになった[9]

の時代には肩輿は轎子(きょうし)と呼ばれ、の時代に使われたが1870年代には要らなくなった[10]

欧州

ロンドンでは1634年にサンダース・ダンコム卿が輿をセダン・チェア、担ぐ人達をチェアメンと名付け、[11]普及し1712年まで続いた[12]

18世紀にはオーストリアウィーンで輿の運行が認可されるなど、ヨーロッパ各地で馬車よりも手軽な乗り物として輿が普及した[9]。ヨーロッパの輿は明治時代に横浜でも導入されていたほか、中国の観光地では今でも乗り物として利用されている[9]

ギャラリー

輿に実際に乗れる観光地

脚注

  1. ^ 江戸初期の『武家諸法度』(元和令)には、「雑人、恣(ほしいままに)不可乗輿事」(「身分の低い者は許可なく輿に乗ってはいけない事」)と記されている。
  2. ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2017年3月15日). “クラシカル霊柩車絶滅の危機…火葬場入場禁止の自治体も 「走る寺」アジア仏教国では人気”. 産経ニュース. 2021年12月24日閲覧。
  3. ^ a b c 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、2頁。 
  4. ^ a b 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、10頁。 
  5. ^ 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、20頁。 
  6. ^ 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、26頁。 
  7. ^ 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、33頁。 
  8. ^ a b 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、35頁。 
  9. ^ a b c d e 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、55頁。 
  10. ^ https://www.epochtimes.com/b5/4/9/26/n671901.htm
  11. ^ 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、60頁。 
  12. ^ 櫻井芳昭『ものと人間の文化史 輿』法政大学出版局、2011年、61頁。 

参考文献

  • 石村貞吉 『有職故実 下』〈『講談社学術文庫』〉 講談社、1987年 ※「調度・輿車」
  • 佐多芳彦 「輿」 『歴史学事典』(第14巻 ものとわざ) 弘文堂、2006年 ISBN 978-4-335-21044-0
  • 五島邦治監修 『源氏物語と京都 六條院へ出かけよう』 風俗博物館編集・光村推古書院、2005年 194頁 ISBN 978-4-8381-9931-0

「輦台」の例文・使い方・用例・文例

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