議論と調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/09 04:17 UTC 版)
イェドヴァブネの虐殺事件はナチス親衛隊の特務部隊によるものであると一般には考えられていたが、1997年から2000年にかけてポーランド人アグニェシュカ・アルノルド(Agnieszka Arnold)が製作したドキュメンタリー映画「Where is my older brother, Cain?」と「Neighbors」が公開されてから変化した。これらの映画の資料はポーランド人の歴史家ヤン・T・グロスによる事件の詳細な研究書である。そこには、この虐殺はポグロムであることと、今まで考えられていたこととは違い、イェドヴァブネのユダヤ人たちは自分たちの近隣の非ユダヤ系住人たちにより、ドイツ軍による指揮あるいは協力なしに、包囲され、暴行され、焼き殺されたのだという結論に至るまでの記述がある。 当然のことながら、この本はポーランドで激しい議論を巻き起こし、多くの者がその結論に疑問を呈した。ルブリンカトリック大学とポーランド科学アカデミー政治学研究所の歴史学教授トマシュ・ストジェムボシュ(Tomasz Strzembosz)は、事件はポーランド人によるものではあるが、ドイツ軍による指揮があったと主張した。 そこで、国家記銘院(Instytut Pamięci Narodowej, IPN)により徹底的な調査が行われ、2003年に報告書が提出された。犠牲者の遺体発掘調査に際して、多くのユダヤ人たちは宗教上の理由から反対したものの、ポーランド法務省とIPNは遺体調査が事件の真相究明に不可欠だと主張し、実行される運びとなった。報告書では、グロスの調査結果のいくつかは支持されているが、犠牲者の数は約380人であり、グロスの示す1600人に比べて非常に少ない。また、現場には8人のドイツ人警官がいたことがわかった。したがって、ドイツ軍の関与の可能性にはいまだ議論の余地がある。証言者の多くは、虐殺の日にドイツ軍兵士を目撃したと主張している。しかし、虐殺の時にはいなかったと主張する者もいる。調査の記録から、非ユダヤ系ポーランド人の積極的な参加は疑いようがないが、どれ程の規模で、どういう性質のドイツ軍の関与があったのかは解決していない。それでも報告書は、「広い意味で」ドイツがこの事件の原因であるものとし、一方、「厳密な意味で」見積もって40人の非ユダヤ系ポーランド人が事件の原因であるものと結論づけている。
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