諸本の発行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/26 18:10 UTC 版)
アスビョルンセンとモー『ノルウェー民話集』は、いわば原集60話と、新撰集50話の計110話から成る。このうち原集は、1841年をはじめとして、数編ずつ小冊子として小出しに刊行されたという経歴をもつ。これは編者・書名の記載や目次すらない粗末なつくりであったが好評を博し、ピーター・アンドレアス・ムンク(英語版)がドイツ語の新聞で絶賛した。こうした支持を得たことで、今度はきちんとした装丁の書物として改めて出版された。既刊分の第1部(1843年)の再版と、新たな第2部(1844年)である。ふたつの部を統合した第2版は1852年に出されている。原集は当初58話、のちの版で60話となった。新撰集50話(Norske Folke-Eventyr. Ny Samling)は1871年に発行された。 後の版には、ノルウェーの画家、エーリック・ヴァーレンショルド、テオドール・キッテルセン、オットー・シンディング、その他の画家によって、広く知られる挿絵を入れられた。ヴァーレンショルドはアスビョルセンにその絵を喜ばれて民話集の制作に招かれ、民話集によってノルウェーで広く知られることとなった。またキッテルセンは、ヴァーレンショルドが民話集の続刊の制作に招かれた時、民話の世界を描き出すのに優れているからとアスビョルンセンに紹介した、まだ無名の画家であった。アスビョルンセンは同時代のロマンティシズムとは無縁の彼の作風に驚きつつも、その絵を見た子供達が民話世界への憧れを掻き立てさせられたのを目の当たりにし、キッテルセンを挿絵に迎えた。 また、アスビョルンセンが単独で発表した民話集に『ノルウェー妖精民話と伝説(Norske Huldre-Eventyr og Folkesagn)』(全2巻、1845–48年)があり、これも第2集Norske huldre-eventyr og folkesagn: anden samling (1866年)によって補完されている。 『ノルウェーの民話集』はグリム兄弟からも高く評価され、『グリム童話』に続いて世界に受け入れられた。1844年、アスビョルンセンとモーはヤーコプ・グリムに宛てた手紙において、『キンダー・ウント・ハウスメールフェン』を読んだことなどで多くのアイディアを得た旨の礼を述べている。なお、モーは聖職者としての仕事が多忙となったため民話の収集と研究が困難となったが、彼の息子モルケ(英語版)が父を継いでアスビョルンセンと共に研究を続けた。後にモルケは民俗学者となった。 当初の話集は児童向けではなかったが、収録された民話は、まもなく児童向け雑誌や童話集、読本などにも掲載されるようになり、1883年にはアスビョルンセンみずからが選した『児童のための民話本』(Eventyrbog for Barn)が発行された。これと、その続編・続々編(1883–1887年)は、何度も版をくりかえし、文章も複数にわたり改められた。収集した民話はかならずしも教訓や教育的要素があるとはいえず、児童に適した読書ではないと指摘される。
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