請負人の担保責任
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 23:00 UTC 版)
2017年改正前の民法では、請負契約の仕事の完成後、請負契約の目的物に「瑕疵」(キズ)があった場合、請負人は注文者に対して「瑕疵担保責任」を負うこととされていた。請負人の担保責任(請負担保)は一般の担保責任の特則であると同時に債務不履行責任の特則でもあった。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で瑕疵担保責任から契約不適合責任に用語が変更され、請負についても基本的に売買の契約不適合責任の規定を準用し(559条)、請負に特有のものだけ別途規定(636条、637条)することになった。法改正後は履行の追完請求、報酬減額請求、契約の解除、損害賠償請求が可能となる。 責任の発生請負契約の目的物の種類・品質・数量が契約不適合であるときに責任を負う(559条・562条)。 注文者の追完請求権注文者は履行の追完を請求できる(559条・562条)。2017年改正前の民法では履行の追完は瑕疵修補請求に限られていたが、改正で代物請求などの手段も可能となった。ただし、請負契約及び取引通念上追完できないときは履行の追完を請求できない(412条の2第1項)。 注文者の損害賠償請求権請負人に過失があったときは損害賠償の請求をすることもできる(559条・564・415条)。2017年改正前の民法では無過失責任とされていたが、改正で過失責任に改められた。 注文者の契約解除権注文者は債務不履行の規定により契約を解除できる(559条・564・415条)。2017年改正前の民法では契約の目的が達することができないときに限られていたが、改正で契約の目的が達することができないときでなくても解除可能になった。なお、2017年改正前の民法では建物その他の土地の工作物については契約解除権が認められていなかったが、改正でこの区別はなくなった。 存続期間目的物の種類又は品質に関する担保責任は、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない(637条1項)。2017年改正前の民法では引き渡し時(仕事終了時)から1年以内に請求しなければならないとされていたが、改正で注文者が契約不適合であることを知ってから1年以内に通知すればよいことになった。なお、請求権は一般の消滅時効にはかかるため引き渡し時(仕事終了時)から10年で消滅する。 目的物の数量に関する担保責任は、一般の消滅時効により契約不適合であることを注文者が知ってから5年、引き渡し時(仕事終了時)から10年で消滅する。 なお、2017年改正前の民法では建物その他の土地の工作物については異なる規定になっていたが、改正でこの区別はなくなった。 責任の制限請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない(636条)。 責任免除の特約請負人の責任を特約で免除することもできるが、請負人が知りながら告げなかった事実については免除されない(559条・572条)。
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