請負事業に関する例外
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 09:02 UTC 版)
第87条 厚生労働省令で定める事業が数次の請負によつて行われる場合においては、災害補償については、その元請負人を使用者とみなす。 前項の場合、元請負人が書面による契約で下請負人に補償を引き受けさせた場合においては、その下請負人もまた使用者とする。但し、二以上の下請負人に、同一の事業について重複して補償を引き受けさせてはならない。 前項の場合、元請負人が補償の請求を受けた場合においては、補償を引き受けた下請負人に対して、まづ催告すべきことを請求することができる。ただし、その下請負人が破産手続開始の決定を受け、又は行方が知れない場合においては、この限りでない。 「厚生労働省令で定める事業」とは、労働基準法別表第一第3号に掲げる事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業)とする(施行規則第48条の2)。これらの事業では下請・孫請といった数次の請負によって行われることが通例であるが、雇用契約は下請業者とその下で働く労働者との間で締結されても、実際の指揮監督は元請業者が行うことが多い。そこで下請労働者保護の見地から第87条の規定が設けられ災害補償については元請を使用者とみなして下請労働者に対する災害補償責任を負わせている。たとえ元請が下請労働者との間に使用従属関係がないことを証明しても、災害補償については使用者とみなされるため補償責任を負う(判例として、東京地判昭和46年12月27日)。 第2項により被災労働者が元請・下請双方に請求可能である場合、第3項は元請にいわば保証人でいう「催告の抗弁権」(民法第452条)のような権利を認める趣旨である。もっとも保証人と違って「検索の抗弁権」(民法第453条)までは認められていない(第87条は「検索」を求めていない)し、催告を怠ったことによる使用者の免責規定も設けられていないので、被災労働者が下請に催告を行っても下請が補償をしない場合には(たとえ下請に補償の資力があったとしても)結局元請が補償をしなければならない。
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