誤った着陸方法の準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:42 UTC 版)
「エアブルー202便墜落事故」の記事における「誤った着陸方法の準備」の解説
機長は巡航中、到着空港の天候が悪いことや滑走路12が使用されていることを把握し、準備を行った。 着陸空港へのアプローチは、サークリングアプローチ (周回進入) 方式がとられた。標準的な手順の場合は次のように行われるはずだった。まず着陸する滑走路と反対方向の滑走路30のILSを補足し、滑走路30に向かって降下していく。最低降下高度 (当日の場合は2,510フィート (770 m)) で水平飛行に移り、空港を目視できたら、進路を左右どちらか45°にとり30秒間飛行して滑走路との間隔をとる。これをブレイクオフという。次に滑走路と平行に規定の秒数だけ進み、最後に180度旋回して滑走路12と正対し、着陸する。 ただし、ベナジル・ブット国際空港では南側からのサークリングアプローチは許可されておらず、経験豊富な機長もそのことを知っているはずだった。にもかかわらず、機長は北側の天候の悪さと低い雲底を理由に南側からアプローチを行うことに固執し、3回も管制官に要求して断られ、最終的には北側からのアプローチに入った。 また、機長はこのアプローチを、独自に作成したウェイポイント (通過地点) を頼りにしたNAV (ナビゲーション) モードで行おうとしていた。独自のウェイポイントはPBDという種類のもので、PBD8 - 11まで作られた。このうちPBD10は滑走路12端から直角に5海里 (9.3 km)右の位置に、PBD11はCFから直角に5海里 (9.3 km)右の位置に設定された (右図参照) 。これらは有視界進入における制限空域 (空港から半径4.3海里 (8.0 km)) を逸脱した位置にあり、PBD11は不幸なことに墜落地点のすぐそばだった。 これらの誤ったウェイポイントの入力は機長の指示によって副操縦士が行った。また入力中、機長は「滑走路30と平行に3–5海里 (5.6–9.3 km)進み、CFと並んだら、CFに進路を合わせる」とブリーフィングを行った。これは規定の手順に反するものだったが副操縦士が反論することはなかった。 機長がこのようなNAVモードを用いたアプローチ方法を準備していたのは視程の悪さを考慮してのことだった。しかし、本来ブレイクオフから着陸までは、ずっと空港が視認できる状況でなければならず、NAVモードではなく、直接方位を選択するモード(HDGモード等)を用いて飛行すべきだった。
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