観測網の粗い地域でのロス・誤差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 08:10 UTC 版)
「緊急地震速報」の記事における「観測網の粗い地域でのロス・誤差」の解説
緊急地震速報の情報源である観測点の密度が低い地域が日本には存在する。本土から離れた離島である伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島などである。また、これ以外の地域でも、離れた海域で地震が発生した場合は同じような状況下におかれる。こういった地域では、速報発表に必要な複数観測点で地震波を検知するまでに時間がかかるほか、観測点数が少ないため多数の観測点のデータを比較して精度を上げることが難しく、震源・規模・震度などの誤差が拡大しやすい。 こういった問題は、2008年4月28日の沖縄県宮古島近海を震源とする地震を契機に問題視された。この地震では、震源が海域だった。そして海底には地震計がなく、宮古島に地震波が到達して初めて観測され、速報が発表されたのは午前2時32分25秒だった。しかし、宮古島市の揺れの到達は午前2時32分20秒と、およそ5秒の差が出た。海底に地震計が設置されていた場合、速報が発表された可能性もある。さらに、速報で発表された震源が実際よりも南に30キロ離れるという誤差があった。また、同年8月5日に宮古島近海を震源とする震度1の地震が発生したが、この際の「高度利用者向け」予報第3報では最大震度3と発表され、深さが実際と10キロ前後、マグニチュードも1程度の誤差が生じた。第1報ではさらに誤差が大きかった。 沿岸部を震源とする地震の場合、いずれも同じことが発生している。まず、第1報の情報源となる地震波を検知すると、震源の深さまでは特定が困難であるため、P波・S波の時間差から、震源・規模を算出する(この場合、多くは深さが10キロと発表)。次に、第2報の基となる地震波検知で、P波・S波から震源・規模を算出する。第1報と照らし合わせ、時間差が極端であれば震源の深さを算出する。上述の地震を例にすれば、この算出方法は成り立つ。逆に内陸部での地震の場合、地震計がある程度密集している地点では深さなどが容易に算出することが可能となるため、誤差は起きにくい。 海域が震源となる地震の場合、海底で地震波が観測できず、陸地に到達して初めて観測されたため、速報発表が遅れる。また、「一般向け」緊急地震速報は、最低でも2か所以上の地震計が揺れを観測してから速報を発表しているため、震源地にもっとも近い1か所目の地震計が揺れを観測しただけでは速報が発表されない(「高度利用者向け」速報の場合は、速報が発表されるが、大きく誤差が生じることもある)。1か所目と2か所目の地震計が離れている場合は遅延がさらに伸びる。現在の観測点はほとんど陸上であり、海底で設置されている箇所は南海ドラフ巨大地震が危惧される静岡沖から日向灘までの沖合い、東北地方太平洋沖地震の震源域で日本海溝と千島海溝の沖合いである房総沖から釧路沖までの沖合い、地震活動が活発な伊豆諸島近海に集中している。海底観測点は、海溝型地震の速報を速くし精度を上げられるほか、津波の予測にも役立つ利点がある一方、設置や保守にかかるコストや労力が高く、設置はあまり進んでいない。
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