複数の信頼できない語り手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 23:21 UTC 版)
「信頼できない語り手」の記事における「複数の信頼できない語り手」の解説
複数いる語り手たちが私利私欲、個人的な偏見、恣意的な記憶のために全員信頼できないという作品もある。 映画『羅生門』や、その原作である芥川龍之介の『藪の中』では、ある武士の死について複数の人物が検非違使に証言をするが、各人の語る証言は詳細が異なり、それぞれが矛盾する内容になっている。『藪の中』が下敷きにしたアンブローズ・ビアスの『月光の道』もほぼ同様である。『羅生門』は海外でも高く評価され、各証人の発言が矛盾する事態を指す「羅生門効果」という用語も生まれた。 男女間の立場についての食い違いはモチーフとして広く取り上げられ、『ヒー・セッド シー・セッド 彼の言い分 彼女の言い分』や『グリース』などでは、男性側と女性側とで自分たちの関係についての言い分が完全に食い違う。またさだまさしの歌う『検察側の証人』では、ある破局に対し全く異なる主張をする3人の語り手が、1・2・3番を歌う形を採っている。 湊かなえの小説『告白』では、登場人物達は作中で行われた事象を全て把握しているわけではなく、殺人事件の実情を被害者の母親である主人公は「主犯はともかく、直接手を下したもう一人の犯人には殺意はなかった」と思っていたのに対し、手を下した犯人は「殺意を持って殺した」としているといった錯誤がいくつもある。 同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』では、シリーズ化された作品ごとに主人公が異なる。主人公たちは「雛見沢症候群」という精神疾患を発病して非常に猜疑心の強い状態となっており、次第に妄想と現実の境が曖昧になり発狂状態となって殺人を行い、遺書のような手記を残して死亡する。
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