製造技術上の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 01:39 UTC 版)
ペリスコープの質が悪く、また前期の型には周辺監視用のコマンダーズ・キューポラも無い。主砲交換と燃料タンク取り出し用に巨大化した砲塔上面ハッチが前方の視界を塞いでしまうため、周囲確認のため乗り出した戦車長は格好の標的として狙撃された。またこのハッチは極めて重いため、負傷すると開けられず脱出が大変困難であった。1942年型からハッチが戦車長兼砲手用と装填手用別々に分かれ、後には直視型の防弾ガラス入りスリットのあるキューポラを装備した1943年型も生産され、視界はある程度改善されたが、それでもハッチが重いので現地ではロック機構のスプリングを取り外すなどしている。 精密機器として見た場合、多くの問題があった。トランスミッションが故障しやすく寿命が短かったり、防水加工が不十分で砲弾を濡らしたり電気系が漏電する危険があり、砲塔回転用のモーターが過負荷で火花を噴いたり、砲塔回転ギアの材質や工作精度が悪く破損したりした。これらの問題点はアメリカに1輌提供され、現在もアバディーンに展示されている1941年戦時簡易型の調査でも明らかになり、アメリカ軍により記録されている。しかしながら、後にアメリカから提供された工作機械などにより改善された部分もある。 被弾すると、敵弾が貫通してもしなくてもホプキンソン効果により装甲内壁が剥離して飛び散り、乗員を殺傷する危険があった。これは、レンドリースされた米英製戦車のニッケルを多く含む装甲と比較して顕著であった。当時の乗員の話によると、特に砲塔の乗員の死傷率が高かったという。大戦期に製造されたT-34のほとんどが戦況が逼迫する中で急造されたものであり、製造に使用された素材もスクラップにされた旧式戦車や自動車等の機械類をいったん溶かしてから再利用されるのがほとんどであったことが理由として挙げられる。新しくニッケル等の素材を調合して装甲材を製造する余裕が、戦時下のソ連では大戦後期を除いて与えられなかったためだからこそである。
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