表語・表音文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/08 16:05 UTC 版)
象形文字であるヒエログリフも含め、初期からアブジャド的な表音文字としての用法(いわゆる仮借)が固有名表記に用いられている。エジプト語もフェニキア語などのセム系言語と同様にアフロ・アジア語族であり語根が子音配列で決定され母音の違いによる意味の違いが周辺的なものにとどまるため、母音を表記しないという点でセム系アブジャドと共通であるが、エジプト文字は、エジプト語表記に必要な単子音文字を完備するほかに、2子音、3子音を中心とした子音配列に対応する文字を持つ。これらの多くは表意的(表語的)な用法でも用いられ、この場合は表意的な用法であることを示す記号が付加された。また、同じ記号連続の多義性を解消するための意味限定符も加えられた。これらや文法上の双数と複数を示す記号は、純粋に表意的な記号である。一方で、表音面での曖昧さの解消のために、ふり仮名や送り仮名に相当する表音文字もしばしば付加された。つまり、ある語が、表音あるいは表意用法の文字(連続)にこれら各種の区別のための記号を加えた連続として表記され、全体として他の語と区別される仕組みであるといえる。このような仕組みのため、特に線文字のヒエラティックやデモティックでは、語の綴りがある程度固定する傾向がみられる。文字の配置も右から左への横書きに固定され、頻繁に用いられる連続では結合字が多用された。これに対して、象形性を維持したヒエログリフでは、同じ語の綴りや配置が全体としてのデザインに配慮して入れ替えられることがあったほか、寓意的な表意記号による置き換えなど、固有の約束事に基づくとみられる特殊な綴り字も用いられた。これらの約束事は、ヒエログリフ書記としての神官によって継承されたとみられるが、これらの伝承(のみ)が古典文献を通じてヨーロッパに伝えられ、神秘的な象形表意文字という誤解が近代まで続くことになった。
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