自動式デフロック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 09:48 UTC 版)
自動式デフロック(オート・デフロック、Automatic locker)とは、運転手の直接的な作動指令なしに自動的に固定と解除を行うデフロックである。自動式デフロックは設計上、直進中は常時固定とされるため各車輪のトラクション状態に関係なく常時エンジン回転数が均等に車輪に伝達され、コーナリング時など各車輪の回転数が変化する必要がある場合にのみ固定が解除される。その場合であっても、自動式デフロックはその制御下にある車輪のいずれかが、デフキャリアまたは車軸全体の回転速度よりも遅く回転することはシステムとして許容しておらず、速く回転する場合のみ回転差が発生することを許容する設計である。このタイプのデフロックで最も一般的で著名なものは、マッスルカー時代のアメリカ車でポピュラーであった、デフキャリア全体を置き換える形で実装されデトロイト・ノースピン(Detroit No-Spin)の別名でも知られたデトロイト・ロッカー(Detroit Locker)であろう。他には、純正デフキャリアをそのまま使用し、内部のスパイダー・ギアとアクスルシャフトのみを交換する形でデフロックのためのインターロッキング・プレートが内蔵される、ランチボックス・ロッカー(en:Lunchbox locker)と呼ばれたものも著名であった。いずれの自動デフロックでも、左右の車輪のトラクションが等しい条件下でコーナリングを行う場合にはオープンデフと同程度の差動を行い、それ以外の条件下ではトラクションの状態に従って自動的に両方のアクスルシャフトを直結状態とした。いずれのものも外部に制御装置の類は必要なく、車軸の回転より車輪の速度が速くなった場合のみに遠心力でデフロックユニットのインターロッキング・プレート(ドグクラッチ)の噛み合いが外れてフリーとなり、車軸の回転と車輪の速度が同一または車輪の速度が遅くなると、遠心力で離れていたプレートはスプリングで押し戻されて再び噛み合い、直結状態となる比較的簡素な仕組みである。 長所: 自動的に作動し、運転手の操作は一切必要ない。作動・解除の際に停止を行う必要もない。 短所: 運転中の車体の挙動とタイヤの摩耗に大きな影響を与える。上記の通り、差動機能を有するとはいえども、通常のオープンデフと異なり車輪が車軸よりも遅く回転する事は許容しないシステムのため、コーナリングの際にある一定の局面まではデフロック状態のためにヘビー・アンダーステア特性を示し、コーナー外側の車輪が車軸よりも速く回る必要がある局面に差し掛かると差動機能が働き始め一気にパワー・オーバーステア特性に遷移することが特徴であった。 その他のいくつかの自動式デフロックでは、ホイールスピンが発生するまではオープンデフとして動作し、ホイールスピンを検知するとデフロック状態になるものも存在した。この形式のものは一般的に左右車輪の回転速度差を検知するために、内蔵されたガバナーを使用した。この形式のものはゼネラルモーターズではGov-Lokと呼ばれた。 さらにその他のいくつかの自動式デフロックでは、高トルクが掛かるまではオープンデフとして動作し、高トルクを検知するとデフロック状態になるものも存在した。この形式のものは非常に高いフリクション特性を持つ歯車が内蔵されており、今日のトルク感応型LSDに近いものである。この形式のものはZFのsliding pins and camsとして、初期のフォルクスワーゲンに採用されたものが知られている。 日本では、トヨタ・ランドクルーザーやスズキ・ジムニーなどクロカン4WD向けのアフターマーケットパーツとして、ロックライト(Lock Right)の名称で販売されるものがこの形式の中では比較的著名である。ロックライトは上記のものとは異なり、エンジンからのトルク伝達時(スロットルを開いているとき)にのみデフロック状態となり、スロットルを戻して車軸からバックトルクが掛かっている際にはロックが解除される仕組みである。
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