聖イルデフォンソ祭壇画とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 聖イルデフォンソ祭壇画の意味・解説 

せいイルデフォンソさいだんが〔セイ‐サイダングワ〕【聖イルデフォンソ祭壇画】


聖イルデフォンソ祭壇画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/24 00:12 UTC 版)

『聖イルデフォンソ祭壇画』
ドイツ語: Ildefonso-Altar
英語: Ildefonso Altarpiece
作者 ピーテル・パウル・ルーベンス
製作年 1630-1632年
種類 キャンバス上に油彩
所蔵 美術史美術館ウィーン

聖イルデフォンソ祭壇画』(せいイルデフォンソさいだんが、: Ildefonso-Altar: Ildefonso Altarpiece)は、フランドルバロック期の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが1630-1632年にオーク板上に油彩で制作した三連祭壇画である。中央パネルは縦352センチ、横236センチ、左右両翼パネルはそれぞれ縦352センチ、横109センチとなっている。作品の外側には『リンゴの木の下の聖家族』が描かれていたが、後に本作から切り離され、独立した絵画となった[1]。本作も『リンゴの木の下の聖家族』も、1777年にマリア・テレジアにより購入され[1]、現在はウィーン美術史美術館に展示されている[1][2][3]

作品

スペインネーデルラント総督アルブレヒト・フォン・エスターライヒは、ハプスブルク家への忠誠を促すためブリュッセルサン・ジャック・ド・クーデンベルグ英語版にイルデフォンソ兄弟団を創設した[1]。この祭壇画はアルブレヒトの死後すぐに、アルブレヒト大公の寡婦イサベル・クララ・エウヘニアにより兄弟団礼拝堂のために委嘱された[1][2][3]

7世紀のトレド大司教聖イルデフォンソは、聖母マリア処女懐胎を否定する異端者たちを論破した[1]。この作品の名称は聖イルデフォンソに由来し、中央パネルは彼が見た幻視を表している。この幻視で、彼は多数の聖人を従えて出現した聖母マリアから感謝の印としてカズラを賜った[1][2]。両翼パネルには、その奇蹟の目撃者としてネーデルラント総督夫妻のアルブレヒト・フォン・エスターライヒ (左翼パネル) とイサベル・クララ・エウへニア (右翼パネル) が描かれている[1][3]。彼らは、それぞれ自身と同じ名前の守護聖人[3]であるルーヴェンのアルベルト英語版聖エルジェーベトを伴なっている[1][2]

ルーベンスは本作の中央パネルを制作するにあたり、ラファエロの『教令集を承認する教皇グレゴリウス9世』 (ヴァチカン宮殿) の構図に従った。また、中央パネル左端の聖女のポーズは、古代ローマ彫刻『貞淑像』 (ヴァチカン宮殿) から採られている[1]

三連祭壇画というフランドルの伝統的な形式は、当時すでに古代風の柱や破風を用いた壮麗な建築的枠組みを持つ1つの画面の祭壇画にとって替わられていた。ルーベンスはこのイタリア的な新形式の導入者であったが、本作ではあえて三連祭壇画の形式が用いられている[1][4]。それは、兄弟団の創設者、祭壇画の寄進者、そしてルーベンスの敬愛するアルブレヒト大公夫妻の肖像に場所を与えるためであったと思われる。この作品の制作当時、アルブレヒト大公はすでに亡くなっており、本作が完成した翌年、寡婦であったイサベルも世を去った[1]

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 山崎正和・高橋裕子 1982年、87頁。
  2. ^ a b c d The Triptych of St. Ildefonso”. ウィーン美術史美術館公式サイト(英語). 2024年8月12日閲覧。
  3. ^ a b c d 『ウイーン美術史美術館 絵画』、1997年、73頁。
  4. ^ 『ウイーン美術史美術館 絵画』、1997年、57頁。

参考文献

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「聖イルデフォンソ祭壇画」の関連用語

聖イルデフォンソ祭壇画のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



聖イルデフォンソ祭壇画のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの聖イルデフォンソ祭壇画 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS