耐熱性α-アミラーゼ生産トウモロコシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 16:18 UTC 版)
「遺伝子組み換え作物」の記事における「耐熱性α-アミラーゼ生産トウモロコシ」の解説
主としてトウモロコシを原料としたエタノール生産を効率的に行うために開発されたものである。従来、トウモロコシ穀粒の乾燥粉末からエタノールを生産する場合、加水・加熱するとともに微生物由来の耐熱性α-アミラーゼとグルコアミラーゼを添加して澱粉を可溶化と糖化してから、酵母でエタノール発酵させている。微生物由来のα-アミラーゼを添加する代わりに、トウモロコシ穀粒中に耐熱性α-アミラーゼを生産・貯蔵させて、作業工程の簡略化と低コスト化を狙ったものである。たとえば、公開させているシンジェンタシード株式会社の「耐熱性α-アミラーゼ産生並びにチョウ目及びコウチュウ目害虫抵抗性並びに除草剤グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシ (耐熱性α-アミラーゼ産生並びにチョウ目及びコウチュウ目害虫抵抗性並びに除草剤グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシ(改変amy797E, 改変cry1Ab, cry34Ab1, cry35Ab1, 改変cry3Aa2, cry1F, pat, mEPSPS, Zea mays subsp. mays (L.) Iltis)(3272×Bt11×B.t. Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7×MIR604×B.t. Cry1F maize line 1507×GA21, OECD UI:SYN-E3272-5×SYN-BTØ11-1×DAS-59122-7×SYN-IR6Ø4-5×DAS-Ø15Ø7-1×MON-ØØØ21-9) 並びに当該トウモロコシの分離系統に包含される組合せ(既に第一種使用規程の承認を受けたものを除く。)の申請書等の概要」によると、Thermococcales目の好熱古細菌由来のα-アミラーゼ遺伝子を改変した改変amy797E遺伝子をトウモロコシに導入して、耐熱性α-アミラーゼを穀粒で産生させている。トウモロコシ穀粒中で生産されるα-アミラーゼとして耐熱性のものが選ばれた理由は、デンプンの可溶化と糖化の促進と雑菌汚染の減少のためにトウモロコシ穀粒粉末に加水したものを加熱するため、その温度で失活してはならないからである。また、トウモロコシ穀粒中で生産されたα-アミラーゼが予期せぬ影響を及ぼさないようにするため、成熟中や保存中の穀粒中でデンプンを分解しないようにする必要がある。そのためには、細胞内でα-アミラーゼとデンプンを隔離すればよい。そこで、改変AMY797E α-アミラーゼのアミノ末端には、小胞体内腔へ輸送するためのシグナルペプチドが付加された。さらに、カルボキシル末端には、小胞体に局在化させるために小胞体残留シグナル配列(KDEL)が付加された。これらの付加配列により、生産された耐熱性α-アミラーゼは胚乳細胞の小胞体中に蓄積される。一方、α-アミラーゼの基質であるデンプンは穀粒中のプラスチドの一形態であるアミロプラスト中に澱粉粒として存在している。つまり、改変AMY797E α-アミラーゼと基質となるデンプンは、細胞内の異なる細胞内小器官にそれぞれ存在しているため、細胞が破壊されない限りは改変AMY797E α-アミラーゼによるデンプン分解は生じないと考えられる。
※この「耐熱性α-アミラーゼ生産トウモロコシ」の解説は、「遺伝子組み換え作物」の解説の一部です。
「耐熱性α-アミラーゼ生産トウモロコシ」を含む「遺伝子組み換え作物」の記事については、「遺伝子組み換え作物」の概要を参照ください。
- 耐熱性α-アミラーゼ生産トウモロコシのページへのリンク