フォノン
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/31 03:32 UTC 版)
フォノン(英: phonon)、音子、音響量子、音量子は、結晶中における格子振動の量子(準粒子)である。
格子振動を、音波などの弾性波が伝搬する連続的な媒質(弾性体)中の場だと考え、場の量子論を応用することにより考案された[1]。
概要
場の量子論を結晶格子に応用し、結晶中の振動を量子化したものがフォノンである。フォノンは、光子と同様に生成や消滅をすることができ、質量は存在しない。一般的な量子力学のように粒子数が固定された系の波動関数でフォノンを記述することは難しい。
振幅が大きくなる、つまり振動が激しくなることはフォノンの数が増えることで表される。
1次元の格子振動の量子化
1次元の量子的な調和振動子はN個の同種原子から成る。 これはフォノンを考える上で、最も簡単な量子的モデルである。 このモデルは直ちに2次元、3次元に一般化することができる。
質点の位置は平衡位置からのずれx1, x2…として記述される。 (すなわちxi = 0は、粒子iが平衡位置にあることを意味する) 2次元以上の場合では xiはベクトル量となる。 この系のハミルトニアンは次のように書ける。
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二原子鎖の中の光学 (optical) フォノンと音響 (acoustic) フォノン フォノンは、音響フォノンと光学フォノンの2つに大別できる。音響フォノンは、隣のフォノンと同じ位相で振動するが、光学フォノンは逆の位相で振動する。また音響フォノンも光学フォノンも電子励起などを介して光と間接的に相互作用する[3]。光学フォノンは双極子モーメントの変化を伴うため、光との相互作用によって直接励起される(光学的に活性である)[4]。音響フォノンは自身は分極を伴わないため、基本的に光学応答に対して直接寄与はしない[3]。音響フォノンによる光散乱をブリルアン散乱と呼び、光学フォノンによる光散乱をラマン散乱と呼ぶ。
横型フォノンと縦型フォノン
フォノンの波数ベクトル(伝播方向)と同じ方向に格子振動する縦波と、垂直に格子振動する横波という2つのモードがある。
- 音響フォノンでは、縦型フォノンは物質の圧縮や膨張に、横型フォノンは物質のせん断ひずみに相当し、一般的には前者の復原力のほうが大きい。よって音響フォノンでは一般的に縦型フォノンのほうが伝播速度(群速度)が大きい[3]。
- 光学フォノンにおいては、縦型フォノンにより電荷が空間的に偏り(分極Pが電荷密度ρ=-∇・Pの変化を伴う)、分極による反電場の効果として縦型フォノンのほうが一般的に高い角振動数を持つ[3]。
分散関係と周期性
単原子鎖のフォノンの分散関係 線形2原子鎖におけるフォノンの分散曲線。opticalは光学フォノン、acousticは音響フォノン GaAs中の格子振動に対応するフォノンの分散関係ω=ω(k)[5] →詳細は「分散関係」を参照カテゴリ
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