組合の財産関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 00:48 UTC 版)
組合財産の帰属組合の財産は「総組合員の共有に属する」と規定されている(668条)。しかし、組合においては通常の共有と異なり各組合員による持分の処分や清算前の分割ができないなど団体的拘束を受けている。こうした独特な所有関係を表現するため、学説においては、組合財産は組合員によって合有されるといわれてきた。 組合員が組合財産を構成する自己の持分相当について行使できるとすると組合財産を処分したのに等しく組合財産を維持できない。そのため、組合員は、組合財産についてその持分を処分したときでも、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができないとされている(676条1項)。組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることもできない(676条3項)。 組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない(677条)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で明文化された(改正前は相殺の禁止についてのみ677条で規定されていた)。 なお、判例は最判昭33.7.22で次のように述べている。「所論のように組合財産が理論上合有であるとしても、民法の法条そのものはこれを共有とする建前で規定されており、組合所有の不動産の如きも共有の登記をするほかはない。従つて解釈論としては、民法の組合財産の合有は、共有持分について民法の定めるような制限を伴うものであり、持分についてかような制限のあることがすなわち民法の組合財産合有の内容だと見るべきである。そうだとすれば、組合財産については、民法667条以下において特別の規定のなされていない限り、民法249条以下の共有の規定が適用されることになる。」 組合の債権組合の団体的性格から、大審院以来の判例法理では組合債権は組合員が共有するのではなく合有的に帰属しているとされてきた。組合員には持分があるものの、組合債権は組合を構成する各人に分割されるわけではない。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で、組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができないことが明文化された(676条2項)。 組合の債務組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる(675条1項)。組合の債務は各組合員に分割して帰属するのではなく、総組合員に帰属しており組合の財産がその引当てとなるが、民法には明文の規定が無かったため2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で明文化された。なお、組合の負っている債務も各組合員の負担部分に応じた分割債務になるわけではないことは判決によっても確認されていた(大審院昭和11年2月25日判決民集15巻281号)。 組合の債権者は組合員の固有財産に対しても権利行使をすることができる。各組合員は組合の債務について直接無限責任を負う。すなわち、組合の債権者は各組合員に対して損失分担の割合の限度で直接、際限なく債務の履行を求めることができる。 各組合員が債務を負担する割合は組合内で決められた組合員の損失分担の割合に応じて変化する(特に合意がなければ等しい割合となる)。一方、組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合又は等しい割合でその権利を行使することができ、組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、その割合でのみ権利を行使することができる(675条2項)。従来、組合債権者が各組合員に対して均等の割合で権利を行使するには、組合債権者の側が組合員相互間の損失分担の割合について善意(知らなかったこと)であることを立証しなければならなかった。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では、組合内部の取り決めにすぎない損失分担割合を知らない債権者を保護するため、組合債権者は原則として損失分担の割合又は等しい割合のいずれかを選択的に権利行使することができるとされた。法改正で立証責任が組合債権者から組合員に変更され、組合員の側が組合債権者が損失分担の割合について悪意(知っていたこと)だったことを立証した場合には組合債権者はその割合でのみ権利行使できることになった。
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