細胞説の考え方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/01 14:25 UTC 版)
細胞説とは、上記のように時代によってその内容も変貌し、またあまりにも基本的なので、その表現は多様である。たとえば生物学事典第3版では以下のように述べている。 '細胞はすべての生物の構造および機能の単位であり、いわば生物体制の一次的要素である' 細胞が生物の構成の単位であるというのは、あらゆる生物の体が細胞を単位として形成されている、ということである。より具体的に言うと、生物の体は、細胞か、かつて細胞であったものか、細胞が分泌したものの積み重ねと組み合わせで作られている、ということである。植物の場合はほぼ細胞そのものと死んだ細胞の細胞壁でできている。動物の場合、細胞間に細胞が分泌した成分が多い。 これは、見方を変えると体の様々な性質の異なる部分も、同じ細胞というものでできている、ということである。実際には各部分で細胞の形は異なっているのだが、それらはすべて同じ細胞というものが姿を変えたものだとの判断である。その点では動物に見られるものと植物のそれととを同じく細胞と扱うのも同じ見方による。 機能においても、細胞が代謝、刺激への反応、成長といった生物に独特の性質を細胞が持つとする。生殖に関しては、最初の細胞説が問題であった部分であるが、その後に細胞分裂が細胞の増殖法として認められたことで、やはり細胞がその性質を持つとの認識に至った。 構造の面では、細胞内部の構造も問題になる。細胞説の成立の頃は、まだ顕微鏡も性能がよくなく、せいぜい核と核小体が広く知られるくらいであったが、これが様々な細胞に、また動物にも植物にも見られたことが、それらを同じ「細胞」なるものと見なす大きな根拠となった。この当時は、たとえば植物細胞と動物細胞では細胞膜の厚みが極端に異なること(植物の細胞壁が細胞膜と考えられていたため)などから難色を示す考えもあった。しかし、研究が進むにつれてむしろ共通性が確認されたことはあるが、異質性が強いことが重視されたことはない。研究に電子顕微鏡が使われるようになって、この点はさらに強まった。 これらのことは、外見では大きく異なる動物や植物の違いも、細胞のレベルまで下るとその差が大きくないことを意味する。これはまた、特定のモデル生物を使っての細胞以下のレベルでの研究が、より広い生物に適用できる一般性を持つことの裏付けでもある。 なお、実際には生物における細胞のあり方は様々である。また原核生物が発見されたことで細胞への見方は大きく変化した。そのような例は数少なくない。しかしそれらは細胞の概念をより一般化することを助けたとも言える。
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