紙本淡彩前後赤壁図〈池大雅筆/寛延二年五月の年記がある/六曲屏風〉
主名称: | 紙本淡彩前後赤壁図〈池大雅筆/寛延二年五月の年記がある/六曲屏風〉 |
指定番号: | 1886 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 1989.06.12(平成1.06.12) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 絵画 |
ト書: | |
員数: | 一双 |
時代区分: | 江戸 |
年代: | 1749 |
検索年代: | |
解説文: | 蘇軾の「前赤壁賦」および「後赤壁賦」を各隻の主題とする山水図屏風一双である。各図には大雅自身が「前赤壁」、「後赤壁」と題し、それぞれの賦の一部を書している。款記により、寛延二年(一七四九)五月、大雅二十七歳の作であることがわかる。 木々や舟、家屋などの描法は、『八種画譜』、『芥子園画伝』のような画譜に学んだと思われ、点苔の多用、藍・代赭を主調とする彩色ともども、本図が南宗画法を志向していることをうかがわせる。それに対し、構図や山容、岩肌をかたどる荒々しい筆法には、室町水墨画や浙派など、むしろ南宗画とは異質な絵画からの影響が看取される。そして、これらの雑多な要素が巧みな構成のうちに組み込まれ、独特の律動的な筆触を通じ、創意に富む山水図を形成していることは、特筆されるべきであろう。 日本の南画の大成者である大雅は、その二十代において、明末清初の画譜や絵画から南宗画法を学ぶとともに、南宗画以外の画法も取り入れつつ、独自の様式を作り上げていった。大雅の二十代の作品は、そのような試行のさまが、日本の南画の発達過程を示す点で注目される。また、それらは、細く鋭い描線を主とした描写の生新さという点で、円熟期の作品とは別種の魅力を持つことも推賞される。既に国宝・重要文化財に指定された一四件の大雅の作品のうち、二十七歳の作である「陸〓奇勝図」(東京都・下坂澄子氏蔵)のみがこの時期の作に該当するが、本図はこれと違って本格的な山水図であり、また二十代唯一の大作でもある。「陸〓奇勝図」と並んで、大雅の初期作品を代表するに足るものといえよう。 なお、寛延二年五月作の「天産奇葩図」(京都府・池大雅美術館蔵)、同年七月作の「陸〓奇勝図」が、ともに金沢での制作であることから、本図も金沢で描かれたと推定される。 |
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