科学教育に関する研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 09:56 UTC 版)
科学教育の実践は、教育・学習に関する科学研究から影響を受けることがますます多くなってきている。科学教育の研究は様々な学問分野(例としてはコンピューター科学、認知科学、認知心理学、人類学がある)から方法論を借用している。科学教育に関する研究の主な目的は、科学の学習を構成する要素を定義すること、またそれがどのように成し遂げられるかを解明することである。 ジョン・ブランスフォード(英語版)らは、児童生徒の思考に関する膨大な研究から得られた知見として以下の3点を挙げている。 前概念 自然現象がなぜ起こるかについて、学習者は自分なりの強固な概念(前概念)をあらかじめ築き上げている。学習者に正しい説明を受け入れさせるには、教員はその生徒が持っている誤概念に直接対処しなければならない。それゆえ、教員が生徒の前概念を読み取る力を身につけることと、それに基づいて教育計画を立てることが重要である。 知識の構造化 ある科学の分野に習熟するには、以下を身につけなければならない。事実的な知識[訳語疑問点]の基礎がしっかりしている。 事実や概念を概念的枠組みの中に位置づけて理解することができる。 知識が構造化されており、必要な知識をすぐに取り出して応用することができる。 メタ認知 自らの思考と学習について思考することは学習者のためになる。学習者は自分が何を知っていて何を知らないかということや、自分自身の考え方や、自ら導いた結論を自己評価する方法を学ばなければならない。 近年の教育工学は教師それぞれのニーズに応えられるまでに洗練されつつある。中等後の教育現場で携帯電話がどう使われているかを調査する研究によれば、科学の授業にモバイル機器を利用することで学生の集中力とモチベーションが高められる。 社会構築主義指向の教育・学習科学[訳語疑問点]研究を集めた2005年の文献目録によれば、そのうち64%が物理分野、21%が生物学分野、15%が化学分野に関するものである。このように物理分野の研究が主流となっている最大の理由は、物理学習には特有の困難さが存在するためだと見られる。児童生徒の概念形成に関する研究によれば、学習者は物理現象に対して自分なりの考えを抱いて授業に臨むが、それらは総じて学習すべき物理概念や原理とはまったく異なっている。この傾向は幼稚園から第3期教育に至るまで一貫しており、日常経験を通じて構築された概念は物理学的な考え方とは相いれないことがほとんどである。より一般的な思考と推論の様式についても同じことが言える。
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