研究不正行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/04 17:35 UTC 版)
2013年、青山学院大学総合研究所客員研究員(当時)の小柳敦史は深井が前年に発表した著書『ヴァイマールの聖なる政治的精神―ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』の書評を日本基督教学会の学会誌『日本の神学』第52号に寄稿し、その中で「出典が不明な引用や注釈での不正確な文献情報・参照指示が数多くみられる」と指摘。「深井の著作については、すでに同誌第49号にて同志社大学神学部教授の水谷誠も同様の指摘を行っている」として深井の文献資料の取り扱いに苦言を呈した。 小柳はその後も深井の著作の検証を進め、深井が『ヴァイマールの聖なる政治的精神』中で展開した論考において示した論文の書誌情報が公開されていなかったことに疑問を抱いた。そのため、小柳は日本基督教学会を経由して深井の研究不正の疑いに関する公開質問状を送り、これが2018年9月25日付の学会誌に掲載された。小柳は当該論文「今日の神学にとってのニーチェ」やその著者とされる「神学者カール・レーフラー」について調査した結果、「単なる『間違い』ではなく、深井氏による創作であると疑われる内容が含まれることが判明」したと指摘した。同年11月に東洋英和女学院大学は「研究活動上の不正行為の疑いがある」として、6名の委員(学内者3名、学外者3名)で構成される調査委員会を設置した。 調査委員会から複数の指摘について説明を求められた深井は、カール・レーフラーについて、著書に記された「Carl Loevler」の綴りは誤記で、正しくは「Carl Fritz Loeffler」で美術史家のフリッツ・レーフラー(ドイツ語版)(Fritz Löffler、1899年 - 1988年)のことであると主張するなど、指摘事項についてひと通りの釈明をした。 2019年5月10日、東洋英和女学院大学の調査委員会は研究活動上の不正行為(盗用および捏造)があったと認定し、同学院はこれを受けて開催した臨時理事会で深井を懲戒解雇処分とすることを決定した。調査では、深井が『ヴァイマールの聖なる政治的精神』で紹介した「神学者カール・レーフラー」は存在せず、その論文も捏造であることなどが認定された。 研究活動上の特定不正行為に関する公表概要では、深井は「実在しない人物と論文を基に本件著書を書き、その著書の一部にて他者の文献より適切な表示をせず引用を行なった。また、実在しない架空の証拠を基に本件論考を著した。これらについて、本調査委員会は、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務の著しい懈怠があったとして、特定不正行為(捏造・盗用)が行なわれたものと認定する。」と断じられている。 騒動を受けて『ヴァイマールの聖なる政治的精神』の発行元の岩波書店は5月13日に同著書を絶版にすることを決定した。 本人は一部に関して「想像で書いた」などと説明し、意図的な研究不正を認めていない。
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