真犯人の出頭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 15:24 UTC 版)
1956年4月、4人の裁判は大詰めを迎えていたが、いずれも容疑を否認していた。さらに事件当時白いトックリシャツの上にダブルの背広を着た男が自分たちとBの仲裁に入ろうとしたが、Bに顔を殴られたため、ナイフを出したのを見たと証言していた。しかし4人とも犯人の顔を見ておらず主張は言い訳に過ぎないとされていた。 1956年4月4日、京都地検に五番町事件について話があると若い男が弁護士に付き添われて訪ねてきた。聴取が始まるや、担当刑事は1か月前に行われた公判内容を報じた新聞記事を男に見せつけた。内容は「真犯人は第5の男?」や「私は見たトックリシャツ姿」といった見出しだった。 これに先立つ公判では、事件当日現場近くのトイレで血のついたナイフを洗っている白いトックリシャツの男を偶然目撃したと語る女性が証言をおこなった。さらに女性が見たという男の服装や人相は逮捕中の4人の高校生の証言と一致しており4人の証言を裏付けるものだとされていた。女性は妹と花見の帰りに手を洗おうと公衆トイレに寄ったところ白いシャツに背広の男が手ぬぐいと血のついたナイフを洗っている所を約4 - 5メートルの距離から目撃していた。 しかし街灯もない暗がりの場所で、その距離から血がついたナイフを洗っていると正確に視認できる証拠もなく、血の匂いを嗅ぎとって判断したなどの証言から警察は証言の裏付け捜査をおこなった。その結果、現場検証の結果問題の公衆トイレが証言とは全く異なる場所にあったことや、逮捕中の4人の友人から証言台へ立つように頭を下げられていたことなどが発覚し、京都地検は女性を召喚した。女性は虚偽の証言をしたことを認め偽証罪で逮捕された。 こうした出来事があったため、検察庁を訪れた若い男も被告の依頼を受けてなにか企んでいるのではないかと担当の刑事は考えていた。しかし若い男は突然刑事の前にナイフと手ぬぐいを差し出し自分がBを刺したと自供。証言台に立った女性の発言についても事実だと語った。事件から1年も経過した頃に出頭した理由として、2月17日付の京都新聞に掲載された公判の記事を見て悩んでいたところ、3月20日に公開されて間もない映画『真昼の暗黒』(八海事件の冤罪性を指摘して大ヒットしていた)を見てから姉の夫に犯行を打ち明け、そこから母親に話が伝わって自首を勧められ、姉が事務員を務める弁護士事務所の弁護士に付き添われて出頭したものであった。 この内容は4月9日に全国紙で広く報道された。検察も誤認逮捕を認めて起訴を取り消し、傷害致死罪に問われていた4人の無実が正式に認定された。
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