直接の幾何学的意味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 05:20 UTC 版)
「リッチテンソル」の記事における「直接の幾何学的意味」の解説
リーマン多様体 (M, g) 上の任意の点 p に対して、その近傍に測地法線座標系(英語版)と呼ばれる好ましい局所座標を定義することができる。この座標系の計量は、点 p からの測地距離が原点からのユークリッド距離と対応するような形で、点 p を通る測地線が原点を通る直線に対応するように調整されている。この座標系においては、計量テンソルは次の式が成り立つという意味でユークリッド計量による良い近似が成り立つ。 g i j = δ i j + O ( | x | 2 ) {\displaystyle g_{ij}=\delta _{ij}+O(|x|^{2})} 実際、ヤコビ場(英語版)に対して法線座標系における動径測地線に沿って計量テンソルのテイラー展開を行うと、次を得る。 g i j = δ i j − 1 3 R i k j ℓ x k x ℓ + O ( | x | 3 ) {\displaystyle g_{ij}=\delta _{ij}-{\frac {1}{3}}R_{ikj\ell }x^{k}x^{\ell }+O(|x|^{3})} この座標系では、計量の体積要素は p において次のように展開される。 d μ g = [ 1 − 1 6 R j k x j x k + O ( | x | 3 ) ] d μ E u c l i d e a n {\displaystyle \mathrm {d} \mu _{g}={\Big [}1-{\frac {1}{6}}R_{jk}x^{j}x^{k}+O(|x|^{3}){\Big ]}\mathrm {d} \mu _{\rm {Euclidean}}} この式は計量の行列式の自乗根を展開すれば得られる。 したがって、リッチ曲率 Ric(ξ, ξ) がベクトル ξ の向きに正であるならば、ξ の周りの小円錐に収まる初速度をもって p から発し、強収束する短測地線の族が掃く M 上の円錐領域の体積と、ユークリッド空間における対応する円錐領域の体積を比べると、小さな球面楔形(英語版)の表面積が対応するユークリッド空間上の扇形の面積よりも小さいのと同様、後者が小さくなる。類似して、リッチ曲率がベクトル ξ 方向に負であるならば、多様体上のそのような円錐領域の体積はユークリッド空間におけるものよりも大きくなる。 本質的には、リッチ曲率は曲率の ξ を含む平面にわたる平均である。従って、元は円形(もしくは球形)断面をもって発せられた円錐が、楕円(もしくは楕円体)に歪められるとき、それぞれの主軸に沿った歪みが打ち消しあって体積変化がなくなることがありうる。このような場合、リッチ曲率は ξ に沿って零となる。よって、物理学への応用の文脈でいえば、非零の断面曲率があることは、必ずしもそこに局所的に質量が存在することを意味しない。もし、最初は円形断面を持っていた世界線の円錐が後に楕円になるならば、これは別の場所にある質量の潮汐効果によるものである。
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