ドビュッシー:白と黒で
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ドビュッシー:白と黒で | En blanc et noir | 作曲年: 1915年 出版年: 1915年 |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 興奮して Avec emportement | 4分00秒 | No Image |
2 | ゆるやかに暗く Lent.Sombre | 6分30秒 | No Image |
3 | スケルツァンド Scherzando | 4分30秒 | No Image |
作品解説
「この〈白と黒で〉について、あまり考え過ぎないで下さい……この作品は、単に、ピアノの響きから、その色彩と感覚を引き出したものにすぎないのです。もしあなたが賛成してくれるのなら、それはベラスケスの〈灰色〉のようなものだと申しておきましょう」。これはドビュッシーが友人に宛てた一節である。1914年の第一次世界大戦勃発により強い印象を受けた彼が、一年余りの沈黙を経て、音楽的な思考の再発見と自ら述べるほどの、激しい作曲衝動の内から生み出したのがこの作品である。そのような背景からか、ドビュッシーのフランスに対する愛国心が独自の手法を通して音になったと言えよう。3つの小品から成っているが、それぞれの冒頭に詩の一節が書き込まれている。
第一曲 興奮して
グノーの〈ロメオとジュリエット〉からの一節を引用、「その処にとどまり、踊りを踊らないものは、その不快な気持ちを、低い声でつぶやく」。
舞曲風の華やかな雰囲気が全体が支配している。
第二曲 ゆるやかに暗く
フランソワ・ヴィヨン〈フランスの敵に対してうたえるバラード〉からの引用、「公子よ、エオルスの奴隷となるか、グラウクスの支配する森で、さなくば、平和と希望の主となるか、フランス王国に、悪しき法をもたらすのは、その徳を持つに値しない」。
悲劇的で陰鬱な情緒の表現された曲。
第三曲 スケルツァンド
シャルル・ドルレアンの詩の一節、「冬よ、汝は不快な奴輩にすぎない」。
知的で極めて洗練された、独特のユーモアを交えたスケルツォである。メラーズはこれを「悲しみに溢れた生気」と評している。
白と黒で
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 09:36 UTC 版)
『白と黒で』(フランス語: En blanc et noir)はクロード・ドビュッシーが1915年に作曲したピアノ二重奏のための曲。《白と黒とで》とも訳される[1]。
概要
『練習曲集』や『チェロ・ソナタ』、『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』と同時期の作品である。第一次世界大戦の衝撃と体調の悪化による1年ほどの作曲活動の停滞[2]から立ち直り、ドビュッシーは友人のロベール・ゴデに「私は作曲せずにはいられないのです」と書き送っていた[3]。作曲開始時の曲名はフランシスコ・デ・ゴヤの版画集『ロス・カプリーチョス』(フランス語読みでカプリス)にちなんで『白と黒でのカプリス』というものであった。第2曲の献呈から、前年に勃発した第一次世界大戦の影響がはっきり感じられる。
『白と黒で』という題名に関しては、鍵盤の白黒を指す、絵画(版画)の白黒を指す、の二つの説がある。絵画の色説は、編集者のデュランへの手紙で、「カリプスの第二曲の色合いがあまりに黒のほうに押し流されて、ゴヤの『カプリチョス』と同じくらい悲劇的になってしまったので少し明るくした」と告げていること。また別の友人への手紙で「これらの作品は、色彩や感動を脱色しようとした結果、ベラスケスの灰色にまでなった」と語り、どちらも絵画を引き合いにしていることをその根拠としている。また各楽章には時局がらみの政治的意図をこめた引用が付されていることも注目に値する。
3つの楽章から成り、全曲の演奏に12分から15分ほどを要する。
解説
第1曲はセルゲイ・クーセヴィツキーに、第2曲は第一次世界大戦で戦死した陸軍中尉ジャック・シャルロ(出版者ジャック・デュランの甥)[4]、第3曲はイーゴリ・ストラヴィンスキーに献呈されている。
- Avec emportement (無我夢中で)
- Lent. Sombre (ゆるやかに。沈痛に)
- Scherzando (諧謔的に)
- シャルル・ドルレアンの詩の一節「冬よ、お前は嫌なやつだ」が掲げられている。ドビュッシーは、この詩に基づく無伴奏混声合唱曲(「シャルル・ドルレアンの3つの歌」第3曲、1898年作曲)も作曲している。
脚注
- ^ “ピティナ・ピアノ曲事典”. 2022年11月10日閲覧。
- ^ 松橋麻利『作曲家・人と作品 ドビュッシー』(音楽之友社、2007)pp. 144-147
- ^ 『作曲家別名曲解説ライブラリー10 ドビュッシー』(音楽之友社、1993)p. 173
- ^ モーリス・ラヴェルは、『クープランの墓』の第1曲「前奏曲」を同じ人物に捧げている
- ^ 『作曲家・人と作品 ドビュッシー』p. 148
- ^ Ragno, Janelle Suzanne "The Lutheran hymn "Ein' Feste Burg" in Claude Debussy's Cello Sonata (1915): motivic variation and structure" (University of Texas, 2005)
外部リンク
- En Blanc et Noirの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 白と黒で - ピティナ・ピアノ曲事典
固有名詞の分類
- 白と黒でのページへのリンク