男性から女性へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 08:50 UTC 版)
男性から女性への手術 (MTF SRS)では、以下の2つの手法が一般的である。 陰茎会陰部皮膚翻転法 尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、そこに海綿体、陰茎、精巣を除去した陰嚢の皮膚を血流を残したまま移植して膣を形成する。これを造膣と呼ぶ。感覚を残すために、動脈と静脈と神経をつないだ陰茎亀頭の3分の1を移植して陰核を形成する。感覚には個人差が大きく、また術後約1年間は、神経が未結線のために無感覚である。また、術後3か月以上の長期間に渡って、1日2~3回程度定期的にプロテーゼ(スティック、ダイレーターとも呼ばれる)による拡張ケア(ダイレーション)を行い、膣の収縮を抑えることが必要である。長年の女性ホルモン投与による男性器の萎縮などの理由で陰茎や陰嚢の皮膚が不足する場合に、尿道を利用して造膣することも近年可能になった。この術法はモロッコ在住のフランス人医師のジョルジュ・ビュルー (de: Georges Burou) によって1960年代に考案され後の1973年に彼がスタンフォード大学医学部においてその術法を公開したことで世界に普及した。1966年にジョンズ・ホプキンス大学病院で行われた性別適合手術もこの技法を基に若干の変更を加えられたものである。現在タイ王国などアジア諸国も含めて世界的にこの手法が主流となった。 大腸法(S字結腸法) 尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、下腹部を15cm程度開腹して、大腸の肛門側部分であるS字結腸を10数cm使用して造膣をおこなう。性交渉を重視する場合に用いられる手法。分泌される腸液がバルトリン腺液に似た効果を与えるが、膣形成に使用されるS字結腸は血流を確保する目的で完全に腸と切り離せない。そのため常に分泌し続け、ナプキンなどで常時ケアをしなければならないという欠点がある。しかし、術後の膣収縮が少なく、ダイレーションが陰茎会陰部皮膚翻転法に比べて少ない回数で済むという利点がある。デンマークやスウェーデンなど欧米圏ではかつて1950年代を中心にこの手法が行われていたが、現在では古典的な術法とされ、陰茎会陰部皮膚翻転法では十分な奥行きが確保できない場合にしか行われない。日本では、岡山大学病院がこの技法を基に腹腔鏡手術とした手法で行っている。 どちらの方法でも難しいのは血行の保持であり、うまくいかない場合はその皮膚に血が通わなくなるため、その皮膚組織が壊死して脱落する可能性がある。
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