甲案の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
29日の連絡会議は対米条件の審理となり、9月6日御前会議決定の最小限度の要求を緩和した甲案が決定した。従来の条件では短期間内に外交を妥結させる見込みなしと全員が一致したため、条件緩和に議論が移ったが、最大の焦点となったのは中国における駐兵、撤兵問題であった。 東郷外相が「他国の領土に無期限に駐兵するの条理なきこと」を説き駐兵期間5年を主張したのに対し、参謀本部は「駐兵を期限付とする時は支那事変の成果を喪失せしむる」として強硬に反対し、東條首相も暗にこれを支持するなど反対論が相次いだ。東條は永久に近い言い表し方として年数を入れることを提議し、99年案や50年案も出たが、結局は25年とすることで話がまとまった。また、三国条約については従来通りで変更せず、中国における通商無差別待遇の問題については「無差別原則が全世界に適用されるに於いては」という条件を付し、これを認めることに決まった。 甲案 通商無差別問題に関しては、日本は無差別原則が、全世界に適用されるにおいては、太平洋全域、即ち中国においても、本原則の行われることを承認する 三国同盟問題に関しては、日本は自衛権の解釈をみだりに拡大する意図なきことを明瞭にする。同盟条約の解釈及び履行は日本の自ら決定するところにより行動する 撤兵問題に関しては、(A)中国においては華北・内蒙古の一定地域、並びに海南島には日中和平成立後所要期間駐兵、その他の軍隊は日中間協定により2年以内に撤兵。所要期間について米側から質問があった場合、概ね25年を目処とする旨をもって応酬すること。(B)日本は仏印の領土主権を尊重する。仏印からは、日中和平成立又は太平洋地域の公正な平和確立後撤兵 なお、(ハル)四原則に関しては、これを日米間の正式妥結事項に含めることは極力回避する 甲案は、9月25日付日本案から懸案三問題(中国における通商無差別問題、三国同盟の解釈及び履行問題、撤兵問題を指し、日米交渉の三難点と言われた)について日本の譲歩を示したものになる。最大の譲歩は1で、日本が中国における特恵待遇を放棄し、米国の主張する通商無差別原則の適用を中国においても認めたのであった。また、3で駐兵期間は期限付きとなり、駐兵地域から厦門及揚子江流域が外されたことも、日本側の譲歩であった。
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