甲案及び乙案の内報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
東郷外相は10月21日に野村大使に対して「新内閣に於いても…日米国交調整に対する熱意は前内閣と異なる所なし」と交渉継続の方針を示していたが、御前会議前日にあたる11月4日に詳細な訓電を発した。東郷は「破綻ニ瀕セル日米国交」を調整するために日米交渉対案(甲案、乙案)を決定したこと、「本交渉は最後の試みにして我対案は名実ともに最終案」であることを野村に伝えた。 訓電では、甲案は「要之甲案ハ懸案三問題中二問題ニ関シテハ全面的ニ米国ノ主張ヲ受諾セルモノニテ、最後ノ一點タル駐兵及撤兵問題ニ付テモ最大限ノ譲歩ヲ為セル次第ナリ」と説明されたが、撤兵問題については「撤兵ヲ建前トシ駐兵ヲ例外トスル方米側ノ希望ニ副フヘキモ…国内的ニ不可能ナリ」「国内政治上モ我方トシテハ此上ノ譲歩ハ到底不可能ナリ」とした。 また、乙案は「若シ米側ニ於テ甲案ニ著シキ難色ヲ示ストキハ事態切迫シ遷延ヲ許ササル情勢ナルニ鑑ミ何等カノ代案ヲ急速成立セシメ以テ事ノ發スルヲ未然ニ防止スル必要アリトノ見地ヨリ案出セル第二次案」と説明された(ただし、野村に送られた乙案は、アメリカによる傍受・解読を避けるため、備考にある南部仏印からの撤兵の部分が意図的に落とされていた)。 11月5日、東郷は甲案交渉の開始を訓電し、乙案の提示については「必ず予め請訓あり度し」とした。さらに「本交渉は諸般の関係上遅くも本月二十五日迄には調印をも完了する必要」との期限を付けた(この11月25日という期限は外務省独自のものと考えられる)。
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