玄倉ダム放流操作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 22:10 UTC 版)
玄倉ダムの場所 玄倉ダムの諸元は次の通り(北緯35度26分24.6秒 東経139度6分6.6秒 / 北緯35.440167度 東経139.101833度 / 35.440167; 139.101833 (玄倉ダム))。 型式 重力式コンクリートダム 高さ 14.5メートル 長さ 30.5メートル 有効貯水容量 4万2,690立方メートル 目的 水力発電 管理・運用者 神奈川県企業局 利水電気部 このダムは、下流にある玄倉第一発電所(水力発電所)への発電用水を取水するために設けられている。河川法第44条1項に於けるダムの基準「高さ15.0メートル以上」の規定より50センチ低いためダムとしては扱われず、堰として扱われる。また、この玄倉ダムは一般的に想像されるダムのように水を溜め込んで洪水を防ぐようなダムではなく、貯水容量が極めて小規模な取水堰である。 このような小規模な発電用ダムや堰の場合、増水時には速やかなゲートの開放が要求される。洪水調節を目的に持つダムの場合は、あらかじめ雨季の前に貯水池の水位を下げ、洪水が起きても貯水池に水を蓄える機能を持っているが、玄倉ダムの場合は洪水調節機能を持たないばかりか、貯水池自体もきわめて容量が小さいため、洪水が起これば空の状態から数時間も待たずに満水となる。 玄倉ダムにおいては、貯水池への流入量が毎秒50立方メートルを超えた状態を「洪水」として放流を含めた操作を規定しているが、事故当時の流入量は毎秒100立方メートルであり、流入量と貯水容量の比から満水までの時間を算出すると、仮に貯水池が空であったとしても約7分程度で満水となる計算となる。従って、事故当時はこれより短い時間で満水になったことが推測される。 事故当時は玄倉ダムの操作に対する疑問も呈されたが、仮にゲートを開けなければゲート上もしくはダム堤体上を洪水が越流する(堤体越流)が起き、ダム自体が決壊してしまう。洪水時における洪水調整機能を持つダムの放水は特例操作を行うことと同義であり、ダム流入水量と放流水量が同量で洪水調整機能を果たせていない深刻な状態である。 ダムの下流には大規模な多目的ダムである三保ダム(丹沢湖)があり、玄倉ダムが決壊した場合、三保ダムの堤体にも重大な影響を与える可能性がある。三保ダムは土砂、粘土、岩石で河川を堰き止めるロックフィルダムであるため、堤体越流に弱い。三保ダムは洪水調節機能を有するため貯水池である丹沢湖には余裕があったものの、万が一堤体越流が起こった場合、三保ダム決壊という最悪の結果につながっていた。仮に決壊となれば、下流の小田原市をはじめとする深刻な人的被害が想定され、ダム管理者はこうした危険を回避するため、玄倉ダムゲートを全開にしたとしている。 神奈川県警察の要請により、ダムの放流が一時的に停止しているが同様の対応として1968年(昭和43年)8月18日、岐阜県で発生した飛騨川バス転落事故で、要請を受けた中部電力が水力発電用取水堰であった上麻生ダム(飛騨川)の放流を断続的に停止したという前例がある。しかしこのときは本来のダム操作規定に沿ったものではなく、被害者捜索のために特例的に行われた措置である。
※この「玄倉ダム放流操作」の解説は、「玄倉川水難事故」の解説の一部です。
「玄倉ダム放流操作」を含む「玄倉川水難事故」の記事については、「玄倉川水難事故」の概要を参照ください。
- 玄倉ダム放流操作のページへのリンク