特定の物質とのコンジェゲート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/07 14:08 UTC 版)
「高分子医薬品」の記事における「特定の物質とのコンジェゲート」の解説
抗体、リガンド、細胞膜透過ペプチドあるいはポリエチレングリコール(PEG)や糖鎖などを結合してターゲティングを行うことができる。 糖修飾 ガラクトースあるいはマンノースを有する高分子・微粒子がそれぞれ肝細胞に発現するアシアロ糖タンパク質レセプター、クッパー細胞および類洞内皮細胞に発現するマンノースレセプターを介して特異的に取り込まれる現象を利用してこれらの細胞に薬物ターゲティングが可能である。 PEG化 ポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾することをPEG化(PEGylation)という。インターフェロンα、アスパラギナーゼ、顆粒球コロニー刺激因子などで肝臓、腎臓の代謝・排出を抑制し、生体内半減期を大幅に延長した。 膜透過ペプチド 詳細は「細胞膜透過ペプチド」を参照 膜透過ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)は細胞内に導入したい高分子と結合させることで高分子を細胞内に導入させる機能のあるペプチドのベクターである。代表的な膜透過性ペプチドベクターとしてはHIVのTatタンパク質のアミノ酸配列48-60位に対応するペプチド配列(Tatペプチド)やオリゴアルギニンなどの塩基性アミノ酸に富むもの、Drosophiaのantennapediaタンパク質由来ペプチド(penetratin)などの塩基性部分と疎水性部分を有する両親媒性ペプチド、神経ペプチドgalaninとハチ毒mastroparanのキメラペプチドであるtransportan、あるいはその短縮形であるTP10など、疎水性配列に若干の塩基性配列を含むペプチドなどがあげられる。特にTatペプチド、オリゴアルギニン、penetratinがよく用いられる。Tatペプチド、オリゴアルギニンではアルギニンのグアニジノ基が膜透過の本質を担っていると知られている。そのためグアニジノ基を有するβ-ペプチド、ペプトイド、カルバメートなど天然アミノ酸以外のポリマー、直鎖構造を持たないデンドリマー型分子や糖鎖の誘導体など新しいベクターも開発されている。Tatペプチド、オリゴアルギニンを含む高分子の細胞内の取り込みにはクラスリンエンドサイトーシスに加えマクロピノサイトーシスが関与することが知られている。Tatペプチド、オリゴアルギニンが正に帯電しており細胞表面のプロテオグリカン(負に帯電)と相互作用によりマクロピノサイトーシスが促進すると考えられている。 抗体薬物複合体 抗体は高い抗原特異性を有することから、これに他の化合物を結合することで抗原を発現する細胞への特異的ターゲティングが可能である。例えば抗CD20マウスモノクローナル抗体に放射性同位体を結合すれば、CD20陽性細胞の近傍に放射性同位体をターゲティングしてβ線やγ線でCD20陽性細胞を傷害することができる。このような医薬品の代表例がゼヴァリンである。またカドサイラは乳癌の治療薬であるが抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブにチューブリン重合阻害薬のDM1を結合している。またゲムツズマブオゾガマイシンは急性骨髄性白血病細胞に高発現するCD33に対する抗体と、強力な殺細胞効果をもつ抗がん剤のカリケアミシンを結合させたものである。
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特定の物質とのコンジェゲート
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「薬物動態学」の記事における「特定の物質とのコンジェゲート」の解説
抗体、リガンド、細胞膜透過ペプチドあるいはポリエチレングリコール(PEG)や糖鎖などを結合してターゲティングを行うことができる。 糖修飾 ガラクトースあるいはマンノースを有する高分子・微粒子がそれぞれ肝細胞に発現するアシアロ糖タンパク質レセプター、クッパー細胞および類洞内皮細胞に発現するマンノースレセプターを介して特異的に取り込まれる現象を利用してこれらの細胞に薬物ターゲティングが可能である。 PEG化 ポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾することをPEG化(PEGylation)という。インターフェロンα、アスパラギナーゼ、顆粒球コロニー刺激因子などで肝臓、腎臓の代謝・排出を抑制し、生体内半減期を大幅に延長した。 膜透過ペプチド 詳細は「細胞膜透過ペプチド」を参照 膜透過ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)は細胞内に導入したい高分子と結合させることで高分子を細胞内に導入させる機能のあるペプチドのベクターである。代表的な膜透過性ペプチドベクターとしてはHIVのTatタンパク質のアミノ酸配列48-60位に対応するペプチド配列(Tatペプチド)やオリゴアルギニンなどの塩基性アミノ酸に富むもの、Drosophiaのantennapediaタンパク質由来ペプチド(penetratin)などの塩基性部分と疎水性部分を有する両親媒性ペプチド、神経ペプチドgalaninとハチ毒mastroparanのキメラペプチドであるtransportan、あるいはその短縮形であるTP10など、疎水性配列に若干の塩基性配列を含むペプチドなどがあげられる。特にTatペプチド、オリゴアルギニン、penetratinがよく用いられる。Tatペプチド、オリゴアルギニンではアルギニンのグアニジノ基が膜透過の本質を担っていると知られている。そのためグアニジノ基を有するβ-ペプチド、ペプトイド、カルバメートなど天然アミノ酸以外のポリマー、直鎖構造を持たないデンドリマー型分子や糖鎖の誘導体など新しいベクターも開発されている。Tatペプチド、オリゴアルギニンを含む高分子の細胞内の取り込みにはクラスリンエンドサイトーシスに加えマクロピノサイトーシスが関与することが知られている。Tatペプチド、オリゴアルギニンが正に帯電しており細胞表面のプロテオグリカン(負に帯電)と相互作用によりマクロピノサイトーシスが促進すると考えられている。 抗体薬物複合体 抗体は高い抗原特異性を有することから、これに他の化合物を結合することで抗原を発現する細胞への特異的ターゲティングが可能である。例えば抗CD20マウスモノクローナル抗体に放射性同位体を結合すれば、CD20陽性細胞の近傍に放射性同位体をターゲティングしてβ線やγ線でCD20陽性細胞を傷害することができる。このような医薬品の代表例がゼヴァリンである。またカドサイラは乳癌の治療薬であるが抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブにチューブリン重合阻害薬のDM1を結合している。またゲムツズマブオゾガマイシンは急性骨髄性白血病細胞に高発現するCD33に対する抗体と、強力な殺細胞効果をもつ抗がん剤のカリケアミシンを結合させたものである。
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