照準機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
主砲管制射撃の要となる九八式方位盤照準装置(戦艦比叡に先行搭載し、性能を確認したもの)は、艦橋最上部の主砲射撃指揮所(トップと呼ばれた)に設置されている。敵との距離、敵の速度等を測定する測距儀はその下にあり、日本光學製で、艦載用としては世界最大の15.5mの基線長を持ち、一基で三つの距離データが得られ、その平均値がとられた。以上の機器から得られた、基準方位、彼我の距離、双方の速度に加えて、地球の自転速度、風速、気温、湿度、装填される火薬量などの数値を入力して、最終的な敵艦の未来位置に向ける主砲の仰角、方位の修正値を計算する射撃盤(九八式射撃盤改一、一種の機械式アナログコンピュータ)が、船体の装甲内、第一砲塔と第二砲塔のあいだにあった第一発令所に設置されていて、重さは4tあった。九八式射撃盤は射程距離40,000m、敵艦速力40ノット、自艦速力35ノットまで対応していたが、地球の自転に対応する関係から、作戦海面を北緯55度、南緯20度以内(サハリンの北端からニューカレドニア島まで)に限定して調整されていた。砲塔側の方位、仰角の受信は角度通信機(セルシン)で行われ、斉射の引き金は主砲射撃指揮所の方位盤にあった。 九八式方位盤照準装置を設置した主砲射撃指揮所は、後部艦橋として予備が設置されている。ただし後部艦橋の測距儀の基線長は10mである。また、各砲塔にも15.5m測距儀が一基づつ、加えて潜望鏡式照準鏡が設置され、砲塔単独でも射撃ができたが、方位盤を用いた管制射撃より照準に手間がかかり、位置が低いので遠距離は測定できなかった。また、司令塔にも、前部主砲のみに対応した潜望鏡式の簡易な方位盤照準装置が設置されている。 方位盤は防振架台の上にあったが精密機械だけに衝撃には弱く、大和はトラック島沖で、武蔵はレイテ沖海戦で、前檣楼トップの主砲指揮所の射撃盤は、各々一発の魚雷命中の衝撃により、戦闘初期にすでにズレ(大和)、旋回不能(武蔵)となっている。レイテ沖で武蔵と運命を共にした艦長猪口敏平少将(砲術の大家と名高かった)の遺書にも耐衝撃性を上げるよう改善する必要があると記されている。
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