無期懲役の求刑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 16:55 UTC 版)
「青森県新和村一家7人殺害事件」の記事における「無期懲役の求刑」の解説
1956年3月15日、猪瀬裁判長(陪席裁判官は野口・駿河の両名)、山本検事・丸岡弁護人の立会で、論告求刑公判が開かれた。担当検事の山本稜威雄(いつお)は、被告人Mに無期懲役を求刑した。 検察官は論告で、本事件の特色として以下の点を挙げた。 犯人Mは自首したが、原因不明の火災で現場が無惨に焼け出されてしまっている。 Mは犯行時、ボーッとしていて前後を記憶していない。 事件の舞台となった小友集落では、本事件を皮切りに1956年2月までに肉親殺害事件(実弟殺し、実子殺し、実兄殺し:後述)が相次いでおり、さらに今後2件の発生も噂されている。そのような点などで、社会に重大な関心を与えた事件である。本事件の処理は治安維持・社会風紀上、重大なものと認められる。 その上で、焼死したと思われるA5(A1の次女)と、死因が不明な伯母Zの2人については「Mの直接犯行とはいえない」としながらも、「結果的には8人全員がMに殺されたと言える」と指摘。2度の精神鑑定結果についても、地裁に対し「双方とも精神医学上のものであって、法律上の判断ではない。精神医学者はいかに細かい精神障害でも発見し、誇張して判断することも有り得るから、その点に十分留意してほしい」と要望した上で、「鑑定書は、犯行から相当時日を経てMが生き延びたいと考えるようになってから行われた鑑定である」「Mは捜査段階で『計2回、10発くらい撃った』などと供述している一方、『その後は全然記憶がない』と言っているが、撃った回数などは記憶がなければ言えないはずだ。Mは祖母Y・伯母Zまで殺した責任があまりにも大きいので、自分の刑を軽くしたいという思いから、『頭がボーッとした』などと述べている」と指摘、「安斎鑑定の『心神喪失』という結論は推測に過ぎず、林鑑定でも心神喪失を認めることは困難であり、心神耗弱に該当すると認められる」と主張した。そして、犯行については「幼児や逃げようとする伯母・祖母まで追い撃ちした犯行は残忍極まりなく、情状酌量の余地はない」「人道上、許しがたい凶悪犯罪」と主張し、量刑については死刑を選択した上で、心神耗弱を認めて罪一等を減じ、無期懲役が相当と結論づけた。 一方、弁護人は同日の最終弁論で、「安斎鑑定・林鑑定ともに『Mは心神喪失かそれに近い状態だった』との結論を出している以上、Mは刑事上の責任を免れるべきだ」と主張した。「住居侵入は有罪かもしれないが、殺人を犯した当時は心神喪失状態である」として、無罪を主張した。
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