潜水夫の作業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 16:27 UTC 版)
「バーレーンの真珠採取業」の記事における「潜水夫の作業」の解説
採取の中心となる潜水夫は、シーブ(縄の引き上げ役)と対になって潜水を行う。潜水夫は2本の縄とともに潜るが、片方には重石が付いている。潜水夫は重石を利用して効率的に海底にたどり着くと、迅速に作業を始める(重石の付いた縄はこの時点で引きあげられる)。潜水夫は素潜りに近く、半ズボンのようなものを着けただけで、ほかには鼻挟み、真珠貝を引き剥がすナイフ、貝を入れておく網袋(首から提げる)、指先を傷つけないための指袋を携帯しているのみである。ただし、ミノカサゴやクラゲなどに刺されると、潜水できなくなって送還される理由になりえたため、その対策として全身を覆う黒い潜水服(リビス)を着用することがあった。 潜水夫は1、2分程度、息が続く限り漁獲を続け、息苦しくなったら残った縄を引っ張り、シーブに対し自分を引きあげるように合図する。この1回の潜水で取れる真珠貝の数は、イギリス人チャールズ・ベルグレイヴ(英語版)(バーレーン顧問官、在任1926年 - 1957年)によれば、平均的には8個から12個であったという。前述のように、こうした採取の様式は中世からほとんど変化がないといわれるものである。そして、いつからなのかは不明だが、遅くとも19世紀後半以降は、潜水に関連して新しい機械や装具を使うことは禁止されており、ゴーグルの類すら認められていなかったのである。新しい機械などが禁じられていたのは、資金力に関わりなく公平に真珠採取の機会が与えられるようにという趣旨であったという。 潜水夫が採取した真珠貝は1箇所にまとめられてしまうので、誰が採った貝からどの真珠が出たかなどは分からなくなる。こうした潜水はグハマ制と呼ばれるグループ単位の規則的な制度で行われ、連続して何回か潜水をしたあと、他のグループが採取しているときには休憩となる。このグループの数や潜水する回数、休憩とのバランスなどは、船の規模や漁期(水温が高く、潜りやすい時期かどうか)などによっても変化する。また、グループ内で海に入る順番も決まっており、これによって互いの縄が絡まないようになっている。一般的には、潜水夫たちが息を止めて海中で作業する時間の累計は1日当たり1時間から2時間にもなり、休憩時間の累計もほぼ同じくらいになるとはいえ、かなり過酷なものであった。潜水夫の労働を「地球上に存在した最も過酷な労働の一つ」と位置づける者さえいる。
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