滑面小胞体の機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 15:26 UTC 版)
大多数の細胞では滑面小胞体領域は少なく、しばしば一部が滑面で一部が粗面という構造となっている。このような領域は移行型小胞体 (transitional ER) と呼ばれることもある。それはこの領域が、輸送小胞が新しく合成されたタンパク質や脂質をゴルジ装置へ輸送するために出芽する、小胞体の出口部分に相当するためである。 一方、特定の特殊化された細胞では滑面小胞体は豊富に存在し、別の機能を持っている。これらの細胞の滑面小胞体は、脂質合成、炭水化物の代謝、薬物や毒物の解毒など、代謝過程において多様な機能を果たす。 滑面小胞体は、油脂、リン脂質、ステロイドといった脂質の合成に必須である。脊椎動物の性ホルモンや副腎から分泌されるステロイドホルモンは、動物細胞の滑面小胞体で産生されるステロイドの例である。これらのホルモンを合成する細胞は滑面小胞体に富んでいる。 肝細胞も滑面小胞体を豊富に持つ特殊化された細胞であり、炭水化物の代謝における滑面小胞体の役割の例である。肝細胞は炭水化物をグリコーゲンの形態で保存する。グリコーゲンの分解は最終的に肝細胞からのグルコースの放出につながり、血糖濃度の調節に重要である。しかし、グリコーゲン分解の主要産物はグルコース-1-リン酸である。グルコース-1-リン酸はグルコース-6-リン酸に変換され、その後肝細胞の滑面小胞体の酵素によってリン酸が除去されてグルコースとなり、細胞から出ていけるようになる。 また、滑面小胞体の酵素は、薬物や毒物の解毒、ステロイドホルモンのような脂溶性の高いホルモンの代謝を助けている。多くの場合、解毒は脂溶性の高い化合物にヒドロキシル基を付加し、化学物質の水溶性を上げて体外への排泄を容易にするという代謝過程である。よく研究されている解毒反応の例はシトクロムP450ファミリーの酵素によって行われるもので、脂溶性の化学物質や代謝産物に対して、酸化反応の触媒を行うことで、水溶性を高め、それらが細胞膜などに毒性レベルにまで蓄積されるのを防いでいる。 筋細胞の滑面小胞体 (筋小胞体) は、異なる特殊な機能を持つ。小胞体膜は細胞質から内腔へカルシウムイオンを汲み上げて蓄える。筋細胞が神経インパルスによって刺激されると、カルシウムは小胞体膜を越えて細胞質へ移動し、筋細胞の収縮を引き起こす。
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