洞爺丸沈没の原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 08:15 UTC 版)
「大雪丸 (初代)」の記事における「洞爺丸沈没の原因」の解説
船は強い風浪に遭遇した場合、風浪を側面から受けて横転する危険を回避するため、船首を風浪の来る風上方向に向けるのが常である。このような場合、錨泊すれば、船首は自然と風上を向くため、洞爺丸台風当夜も、多くの青函連絡船が、錨泊して船首を風上に向け、さらに錨ごと流される走錨を防ぐため、両舷の主機械を運転しつつ台風の通過を待った。このような態勢でいれば、風下側の船尾開口部から、車両甲板上に海水が大量に浸入することはない、とそれまでの経験から、当時の関係者は考えていた。 しかし、当夜の函館湾は波高6m、波周期9秒、波長は約120mと推定され、当時の青函連絡船の水線長115.5mよりわずかに長く、このような条件下では、前方から来た波に船首が持ち上げられたとき、下がった船尾は波の谷間の向こう側の斜面、つまり、その前に通り過ぎた波の斜面に深く突っ込んでしまい、その勢いで波は車両甲板船尾のエプロン上にまくれ込んで車両甲板に流入、船尾が上がると、その海水は船首方向へ流れ込み、次に船尾が下がっても、この海水は前回と同様のメカニズムで船尾から流入する海水と衝突して流出できず、やがて車両甲板上に海水が滞留してしまうことが、事故後の模型実験で判明した。そして、波周期が9秒より短くても長くても、車両甲板への海水流入量は急激に少なくなることも判明した。 洞爺丸のような船内軌道2線の車載客船では、車両格納所の幅が車両甲板幅の約半分と狭く、車両甲板船尾開口部から大量の海水が浸入しても、その滞留量は250トンとも360トンとも言われたが、車両甲板の両舷側には船室があり、滞留した自由水は舷側まで移動できないため、復原力は維持され、転覆することはない、とされた 。しかし、洞爺丸など石炭焚き蒸気船では、石炭積込口など、車両甲板から機関室(機械室・ボイラー室)への開口部は多数あり、これらの閉鎖は不完全で、滞留した海水が機関室へ流入し、主機械停止に至って操船不能となり、走錨もあって、船首を風上に向け続けることができなくなったことが沈没の要因とされた。 洞爺丸と同型の大雪丸では、洞爺丸台風の当夜、積載車両を全て降ろしており、その分喫水が浅く車両甲板位置も高くなっていて、海水の浸入が相対的に少なかった。また車両がないため、車両甲板の開口部閉鎖作業に支障をきたすものがなかった、などの幸運に恵まれた。それでもボイラー室や機械室、操舵機室への浸水は少なからずあり、潤滑油ポンプや主機械も一時停止したほか、操舵機故障による操舵不能で、両舷機の推力調節でかろうじて針路保持ができ、まさに九死に一生の生還であった。
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洞爺丸沈没の原因
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「十和田丸 (初代)」の記事における「洞爺丸沈没の原因」の解説
船は強い風波に遭遇したとき、側面から風波を受けて横転するのを避けるため、船首を風波の来る風上方向に向けるのが常である。このような場合、錨泊すれば、船首は自然と風上を向くため、洞爺丸台風当夜も、多くの青函連絡船が、錨泊して船首を風上に向け、錨ごと流されないよう、両舷の主機械を運転しつつ台風の通過を待った。このような態勢でいれば、風下側の船尾開口部から、車両甲板上に海水が大量に浸入することはない、とそれまでの経験から、当時の関係者は考えていた。 しかし、当夜の函館湾の高波は、波高6m、波周期9秒、波長は約120mと推定され、洞爺丸の水線長115.5mよりわずかに長く、このような条件下では、前方から来た波に船首が持ち上げられたとき、下がった船尾は波の谷間の向こう側の波の斜面に深く突っ込んでしまい、その勢いで海水が車両甲板船尾のエプロン上にまくれ込んで車両甲板へ流入、船尾が上がると、その海水は船首方向へ流れ込み、次に船尾が下がっても、この海水は前回と同様のメカニズムで船尾から流入する海水と衝突して流出できず、やがて車両甲板上に海水が滞留してしまうことが、事故後の模型実験で判明した。そして、波周期が9秒より短くても長くても、車両甲板への海水流入量は急激に少なくなることも判明した。 洞爺丸のような船内軌道2線の車載客船では、車両格納所の幅が車両甲板幅の約半分と狭く、車両甲板船尾開口部から大量の海水が浸入したとしても、その滞留量は250トンとも360トンともいわれたが、車両甲板両舷側は縦方向の隔壁で区切られた船室のため、滞留した海水は自由水として舷側まで移動できず、この程度では転覆することはない、とされた。しかし、洞爺丸は石炭焚き蒸気船で、石炭積込口をはじめ車両甲板から機関室(ボイラー室、機械室)への開口部が多数あり、これらの閉鎖は不完全で、滞留した海水が機関室へ流入し、機関停止に至って操船不能となり、走錨もあって、船首を風上に向け続けることができなくなったことが洞爺丸沈没の要因とされた。
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