水素冷却
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/09/24 07:42 UTC 版)
界磁や固定子に大きな電流が流れるタービン発電機において、機器の冷却は重要である。容量100[MVA]級以下のタービン発電機では空気により冷却を行うことも多いが、事業用火力・原子力発電プラントで用いられる容量100~1,000[MVA]級のタービン発電機では、通常、冷却効果を高めるため、機内に水素を封入して冷媒としている。水素を空気と比較した場合の特徴を下記に示す。 熱伝導・熱伝達に優れており冷却効果が高い。 密度が小さいため風損が小さい。 絶縁力が高い。 発電機の構成材料(鉄芯・導体・絶縁体等)を酸化劣化させない。 水素は可燃性・爆発性の気体であるが、空気や酸素などの助燃性気体が混合しなければ引火や爆発は発生せず、適切に取扱えば安全上の問題はない。冷却効果や絶縁力の向上とともに、機内への空気の侵入を防止するため発電機内の水素圧力は大気圧の2~5倍に高められており、更に発電機を収める容器は万が一の爆発による圧力にも耐えられる構造となっている。 また、発電機の開放点検などの際は、機内で水素と空気が混合して爆発性雰囲気となることを避けるため、発電機内の水素を一旦二酸化炭素で置換し、その後二酸化炭素を空気と置換して水素と空気が直接混じらないようにしている。 水素冷却のタービン発電機は、日本では1953年に東京電力潮田発電所3号機(出力55MW)で初めて導入され、その後タービン発電機の大容量化が進むこととなった。〔参考:火力原子力発電必携 増補改訂第4版--(社)火力原子力発電技術協会〕 一方、固定子の冷却には、水素冷却よりも冷却効果を高めるため、固定子の導体内部に空けた孔に冷却用の純水を通す固定子直接水冷却が用いられることが多い。高電圧が印加される部材を直接水で冷却することに危惧を感じるかもしれないが、高純度の水は良好な絶縁体である。技術的には回転子の水冷却も可能であるが、構造が複雑で機器コストが高く保守も困難なため殆ど採用されていない。
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