民生用L2波信号(L2C)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 02:25 UTC 版)
「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の記事における「民生用L2波信号(L2C)」の解説
新型のGPSシステムに関する最初の発表のひとつは、既存のC/A(Coarse Acquisition)信号が使用しているL1周波数に加えて、新たな民生用信号を送信できるようにするというものであった。L2周波数(1227.6 MHz)で送信されるこの信号は、L2C信号(第2民生周波数信号)と呼ばれることになった。この信号を送信できるのは、ブロックIIR-M以降の衛星である。当初の計画では、この信号は、新しい次世代GPS運用制御システム(ブロック1)が導入されるまで、測位データを含まないデフォルト・メッセージ(タイプ0)で構成されることになっていた。L2C測位データを運用できる次世代GPX運用制御システム(ブロック1)のサービス開始は、2016年2月に予定されていたが、その後、2022年以降に延期された。 次世代GPS運用制御システムのサービス開始の遅れに伴い、L2C信号は、そのシステムの実用化スケジュールから切り離されることとなった。L2C信号の送信機能を有するすべての衛星(2005年以降に打ち上げられたすべてのGPS衛星)は、2014年4月に民生用測位(civil navigation, CNAV)メッセージの送信を開始し、2014年12月には、空軍よる更新が常続的に行われるようになった。L2C信号が完全に機能するためには、少なくとも24基の衛星が必要であり、それが実現するのは、2021年になると予測されている。2017年10月の時点では、19基の衛星からL2C信号が送信されている。L2C信号は、高い測位精度を実現し、追跡が容易な信号を提供するとともに、局所的干渉が生じた場合の冗長信号としての機能を発揮する。 1基の衛星から2つの民生用周波数を送信することによる直接的な効果は、その衛星に生じている電離層遅延を直接測定し、補正できるようになることである。この測定ができない場合には、共通の測位誤差モデル、または別の情報源(衛星型補強系, Satellite Based Augmentation System)からの電離層補正信号が必要である。GPS衛星とGPS受信機双方の技術進歩に伴い、電離層遅延が、C/A信号に誤差を生じさせる最大の要因となっている。この測定ができる受信機は、2周波数GPS受信機と呼ばれる。技術的特徴は次のとおり。 L2Cには、2つの異なる擬似乱数(PRN:pseudo-random number)シーケンスが含まれている。CM(Civilian Moderate length code)は、10,230ビットの長さで、20 ミリ秒ごとに繰り返される。 CL(Civilian Long length code)は767,250ビットで、1,500ミリ秒ごとに(つまり、1.5秒ごとに)繰り返される。 それぞれの信号は511,500ビット/秒の速度で送信される。ただし、多重化によって、1,023,000ビット/秒の信号が形成される。 CMには変調により、25ビット/秒の測位メッセージと前方誤り訂正が含まれているが、CLには追加の変調データが含まれていない。 CLシーケンスは、非データ部分が長いため、L1 C/Aと比較して、相関的保護能力が約24dB向上(約250倍)する。 L2Cの信号特性は、L1 C/Aと比較して、データリカバリが2.7dB、キャリアトラッキングが0.7dB向上する。 L2C信号の送信電力は、L1C / A信号よりも2.3dB低い。 単一の周波数のみを利用した場合、L2Cの電離層誤差は、L1より65%大きくなる。 仕様:IS-GPS-200
※この「民生用L2波信号(L2C)」の解説は、「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の解説の一部です。
「民生用L2波信号(L2C)」を含む「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の記事については、「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の概要を参照ください。
- 民生用L2波信号のページへのリンク