死刑は懲役より有益なのか?
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 04:04 UTC 版)
「死刑存廃問題」の記事における「死刑は懲役より有益なのか?」の解説
詳細は「法執行機関職員による殺害の一覧(英語版)」を参照 死刑廃止国では凶悪犯が警察官に射殺されることが多いという指摘がある。元参議院議員の佐々木知子は死刑廃止国で警察官による簡易死刑執行(英語版)がおこなわれていると指摘している。これは危険な犯人を射殺してしまえば将来の危険性は永久に除去され刑務所に収容して税金でやしなう必要がないという方法論からきている。 しかし、欧米では銃規制が日本に比べてはるかに緩いので、警察官と銃を使用した犯人への争いの結果として、警察官の正当防衛・業務行為としての発砲が増えるのは必然的であり、それを「簡易死刑執行」という言葉でいいかえるのは、ご都合な詭弁という意見 がある。また日本でも警察官の業務行為としての正当性が認められた判例が()存在することからも、「日本では、警察官は何もできずに死刑をなくしたら理不尽だ」という存置論は根拠をもたない。そもそも、簡易死刑執行は、軍隊においてつかわれていた用語にもかかわらず、なぜ日本だけこの言葉の意味を曲解してもちいるのかが意味不明という指摘がある。また、フランスは死刑廃止と同時に刑法を全面改正して懲役を長くしたという指摘もある。 「簡易死刑執行」は本来は戦時下における軍による軍法上、あるいは司法手続に依らない超法規的処罰(英語版)を指すものであり、司法警察など一般の法執行機関によるものは超法規的処刑と呼ばれている。メキシコ、ブラジル、ロシアなど一部の死刑廃止・凍結国では麻薬密売組織やテロ組織を対象に秘密警察や死の部隊による超法規的処刑が行われている例があるが、超法規的処刑が国際問題にまで発展している国の多くは死刑残置国であり、犯罪組織の撲滅というよりも、国内における反体制派の弾圧を目的に超法規的処刑が正当化されている例がほとんどである。死刑残置国であるインドでは警察官が麻薬密売組織などの構成員と遭遇した際に即座に射殺に及んでしまう事態が多数発生しており、これを記述する法的用語として遭遇殺害(英語版)と呼ばれる概念が存在するが、冤罪の可能性も否定できないとして人権団体からは批難の対象となっている。一方で死刑廃止国であるフィリピンではロドリゴ・ドゥテルテがダバオ市長、後にフィリピン大統領に就任して以来、犯罪者に対する組織的な超法規的処刑を常態化させており、人権団体は批判しているもののこれによりダバオ市及びフィリピンの治安が顕著に改善されたことが確認されている。 なお、犯罪者、法執行機関の双方が銃器を持ち、正当防衛・業務行為としての発砲が発生しやすい国では、自殺(拡大自殺)の一手法として警察官からの発砲を意図的に誘発させる間接自殺(英語版)と呼ばれる行為がしばしば発生するという負の側面も抱えている。
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