死刑判決への評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 14:33 UTC 版)
「福山市独居老婦人殺害事件」の記事における「死刑判決への評価」の解説
土本武司(帝京大学教授)は本判決を「『無期懲役で仮釈放中の強盗殺人は死刑』との基準が確立され、被告人の反省などを過大評価する下級審の死刑回避傾向に歯止めをかけた。最低10年とされる無期懲役の服役年数見直しの契機にもなる」と評価した一方、弁護士・安田好弘(日本弁護士連合会の「死刑制度問題に関する提言実行委事務局」次長)は「最高裁に合わせた結論ありきの事実認定。死刑はそれしかあり得ない時のみ選ばれるべきだが、本事件では(差し戻し前の)一・二審で無期懲役の判断が示されただけに疑問」と指摘した。また菊田幸一(明治大学教授 / 『死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90』)は本判決を「国際的な死刑廃止の動きに逆行する判決。『無期懲役の仮釈放中に殺人を犯したら死刑』という量刑相場を結果的に確立することで死刑の適用拡大を狙っている」と批判した一方、岡村勲(弁護士 / 「全国犯罪被害者の会」(あすの会)代表幹事)は「理由なく人命を奪ったのだから死刑は当然」と指摘した。 『中国新聞』朝刊(中国新聞社・2004年4月24日付)にて記者・荒木紀貴は本判決を「死刑適用については永山基準が総花的であることから裁判所の判断がぶれやすかったが、裁判所は本判決で『無期懲役の仮釈放中に同種の凶悪犯罪を重ねた被告人には相当の理由がない限り極刑で臨む』という明確な基準・視点を示したと言える。しかし一方で『無期懲役でも最低30年服役するので刑として過不足ない』として死刑を回避した一審判決の問題提起・弁護人の主張した死刑違憲論を十分に検討せず退けた点には不満も残る。広島高裁には死刑制度の合憲性について正面から論じてほしかった」と評した。
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