歴史、文芸
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「アルフォンソ10世 (カスティーリャ王)」の記事における「歴史、文芸」の解説
アルフォンソ10世在位中のカスティーリャ王国ではイベリア史と世界史の編纂事業が行われ、『スペイン史』(Estoria de España)と『世界史』(General Estoria)、の2冊の年代記が完成した。史書の編纂に際してはアルフォンソ10世自らが編者を選定し、校閲にあたった。 『スペイン史』の編纂にあたっては国王年代記、古典史料以外にイスラムの史料、叙情詩も用いられた。叙情詩は散文化された状態で『スペイン史』に収録されており、その中には元の詩が散逸したものも含まれている。いずれの年代記の記述も史実と虚構が混在しているが、こうした傾向には中世ヨーロッパ人の歴史観が現れているとも見なせる。『スペイン史』では1252年までのイベリア史が扱われているが後の時代に何度も増補・改訂され、アラゴンやポルトガルでも参照された。1906年、メネンデス・ピダルは『スペイン史』を『第一総合年代記』と題して出版した。 当初『世界史』は天地創造からアルフォンソ10世の治世までを記述することが予定されていたが、天地創造から聖母マリアの家譜を記述するところで終わっている。『世界史』にはギリシャ神話の英雄が多く登場する点が特徴として挙げられる。 アルフォンソ10世は詩作を好んだほか、作曲も手がけている。1257年から1279年にかけての時期に詩人、楽士、ムーア人の踊り手の協力を受けて400超のカンティーガ(叙情的な歌謡)から構成される『聖母マリアのカンティーガ集(Cantigas de Santa María、「聖母マリア頌歌集」、「カンティーガス・デ・サンタ・マリーア」とも)』を完成させた。『聖母マリアのカンティーガ集』はガリシア語で書かれており、西ゴート王国時代の典礼歌と民衆の歌謡曲、東方起源の賛歌、中世の舞踊の影響を受け、トルバドゥールとトルヴェールの技法を取り入れている。『聖母マリアのカンティーガ集』の挿絵にはアルフォンソ10世とともに当時使用されていた楽器や衣服が描かれており、貴重な史料となっている。また、挿絵にはキリスト教徒とイスラム教徒(ムーア人)の奏者が描かれており、アルフォンソ10世のカンティーガの多文化性を確認できる。 1943年にはイヒニオ・アングレス(スペイン語版)によって、アルフォンソ10世のカンティーガが復刻された。
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